エルズルムに到着すると、彼は、
「しばらく時間があるから、ガイドをするよ♪」
といって、町案内をしてくれた。
僕はてっきり、
「僕からチップを取るんだろうな」と思った。
「クルド人には気をつけろ!」
西のヒトたちの言葉が、脳裏をよぎったさ。
でも、
むしろその逆で、食事やおやつをおごってくれた。
大学教授だから、お金には困ってナイと言う。
「どこに行きたい?」
と尋ねられても、
何があるのか、よくわからなかった。
ガイドブックには、
「立派なジャミィが有名だ」
と書いてあったので、
とりあえず、そこを目指してみることにした。
モスクのことを、トルコ語ではジャミィって言うのさ。
ジャミィを一通り散策し終えると、
隣接する広場で、ギターを取り出した。
すぐに大きな人だかりが出来て、
みんな、嬉しそうに、物珍しそうに、僕が歌うのを見ていた。
けれども、
「一緒に歌おう!」と誘い掛けると、
みんな途端に、恥ずかしがっちゃった!
東の民は、チョっとシャイみたいだよ。
なにしろ、
この辺まで来る外国人なんて、ほとんど居ないからねぇ。
僕らがワイワイやっているのを見て、
大学教授の彼は、
「ちょっとカメラを貸して?」と言った。
「ひょっとしたら、
そのまま盗んで逃げるつもりかもしれない…」
と、僕は思った。
「クルド人には気をつけろ!」
西のヒトたちの言葉が、脳裏をよぎったさ。
ギターを持って人だかりに囲まれたこの状況では、
追い掛けることもままならないもんね。
僕は、
「それでもイイや!」と思って、
彼にカメラを手渡した。
旅立ちの直前に買ったばかりの、10万もするカメラだよ。
彼は、ニコニコしながら、
僕らが楽しそうに歌っている様子を、写真に収めてくれていた。
持ち逃げしそうなそぶりなんて、微塵も無い。
歌い終えると、彼はこう言った。
「一人旅だと、
歌っている姿を写してもらう機会も、 そうはナイだろう?」
彼は、カメラを盗る気なんて、
これっぽちも無かったんだ。
彼とは、ココでサヨナラをした。
「何かあったら、いつでも連絡してくれ♪」
と、連絡先を書いた紙を、手渡してくれた。
『トルコで見つけたドラゴンボール』