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エピソード36 『トルコで見つけたドラゴンボール』

エルズルムに到着すると、彼は、

「しばらく時間があるから、ガイドをするよ♪」

といって、町案内をしてくれた。


僕はてっきり、

「僕からチップを取るんだろうな」と思った。

「クルド人には気をつけろ!」

西のヒトたちの言葉が、脳裏をよぎったさ。

でも、

むしろその逆で、食事やおやつをおごってくれた。

大学教授だから、お金には困ってナイと言う。



「どこに行きたい?」

と尋ねられても、

何があるのか、よくわからなかった。

ガイドブックには、

「立派なジャミィが有名だ」

と書いてあったので、

とりあえず、そこを目指してみることにした。

モスクのことを、トルコ語ではジャミィって言うのさ。



ジャミィを一通り散策し終えると、

隣接する広場で、ギターを取り出した。


すぐに大きな人だかりが出来て、

みんな、嬉しそうに、物珍しそうに、僕が歌うのを見ていた。


けれども、

「一緒に歌おう!」と誘い掛けると、

みんな途端に、恥ずかしがっちゃった!

東の民は、チョっとシャイみたいだよ。

なにしろ、

この辺まで来る外国人なんて、ほとんど居ないからねぇ。



僕らがワイワイやっているのを見て、

大学教授の彼は、

「ちょっとカメラを貸して?」と言った。

「ひょっとしたら、

 そのまま盗んで逃げるつもりかもしれない…」

と、僕は思った。

「クルド人には気をつけろ!」

西のヒトたちの言葉が、脳裏をよぎったさ。

ギターを持って人だかりに囲まれたこの状況では、

追い掛けることもままならないもんね。



僕は、

「それでもイイや!」と思って、

彼にカメラを手渡した。

旅立ちの直前に買ったばかりの、10万もするカメラだよ。



彼は、ニコニコしながら、

僕らが楽しそうに歌っている様子を、写真に収めてくれていた。

持ち逃げしそうなそぶりなんて、微塵も無い。


歌い終えると、彼はこう言った。

「一人旅だと、

 歌っている姿を写してもらう機会も、 そうはナイだろう?」

彼は、カメラを盗る気なんて、

これっぽちも無かったんだ。


彼とは、ココでサヨナラをした。

「何かあったら、いつでも連絡してくれ♪」

と、連絡先を書いた紙を、手渡してくれた。


『トルコで見つけたドラゴンボール』

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