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エピソード3 『お遍路さんの集まる喫茶店』

エピソード3

次は、

「写真や絵のギャラリー」というのを、見ていきましょう。


と言っても、

これも別に、特筆すべきことは、ありません。


巷の喫茶店の壁には、

空いたスペースが、クジラの背中ほども、あります。

そして、

自分の絵や写真を、

大衆に披露したいアーティストさんたちは、

クヌギの下のどんぐりほども、大勢おられます。


私たちが、

よく手入れされた花々を「番犬」にしておくと、

優しい心を持った、優しい作品を創られるアーティストさんが、

時々ふらっと、お店に来訪してくださいます。

カウンターで世間話をしていれば、

自分がアーティストであることくらいは、名乗ってくれます。



「作品を見せてよ!」とおねだりすれば、

バッグの中に、ポストカードの一枚くらいは、しのばせているもので、

その才能の一片(ひとひら)を、垣間見ることが、出来ます。


ステキなものであると感じれば、素直に、感嘆します。

「あらー!

 画廊とか、やっとらんの?」

などと促せば、あとはもう、とんとん拍子に、話が進みましょう。


「やりたいけど、お金が無くて…」

というような方が、もっぱら、私のお眼鏡に適います。



偏見かもしれませんが、

アーティストというのは、

貧乏人のほうが、良いものを生み出せるようです。

彼らがひとたび、お金持ちになってしまうと、

雑になり、繊細さが失われてしまいます…。


そのような話を、ある男の子にしたところ、

「それは、天使が逃げていっちゃったからだ」

と、冗談めかして言っていました。

なるほど!

私には、あれが冗談とは思えないのです。


何しろ、

優れた芸術家というのは、たいてい、

ご本人そのものが、天使みたいな顔をしています。

繊細で、優しい顔です。

または、

宇宙人みたいな体付きをしています。

ひょろひょろと背が高く、髪が長いことが多いでしょうか。


ビールっ腹の男性や、ケバい女性に、

繊細なものを生み出すのは、難しいようです。

きっと、創っている最中に、

ビールやマニキュアをこぼして、台無しにしてしまうんでしょう。


…皮肉が過ぎましたね!

どうぞ、ご容赦ください。



ギャラリーの話ですが、

お金の無いアーティストさんを選ぶくらいですから、

当然、彼らからお金を頂戴することは、しません。

額縁まではご自身で用意してもらいますが、

運搬は、お手伝いすることも、多いです。

どうしても、閉店後や休日になってしまいますが…。



私は、

私のお店の中で作品を販売することを、あまり好みませんが、

アーティストさんがそれを願う場合は、リクエストに応じます。

額縁の下に、小さな値札を付けるのです。

その、値札というものが、店のムードをぶち壊してしまうので…


大抵、販売を希望されるアーティストさんは、

「マージンとして、定価の3割をお支払いします」

と、言ってくださるんですが、

私たちは、お断りしています。

「ギャラリー」をやるのは歓迎なのですが、

「画商」をやるつもりは、無いのです。



私は、

画商という人種に、あまり優れた人格者を、知りません。

どうにも、彼らは、

ビールっ腹の大御所画家と、同じ臭いがしますが…。



ですから、

彼らには、もっぱら、こう提案するのです。

「私たちは、マージンを取りませんから、

 通常よりも3割安い値段で、提供して差し上げたらどうですか?」


私としては、

アーティスト側も損せず、購入者側も得するのですから、

これほどナイスなアイデアは無いだろうと、小躍りしてしまうんですが、

どうも、世の中というのは、

そう簡単には、回らないらしいのです…。


なんでも、

「この店でだけ安売りしてしまうと、

 他の卸し先から、クレームが来る」

ということなのです。

…つまり、


「消費者に、安価に購入して頂くこと」よりも、

「商売人が、より大きな利益を得ること」

のほうが、大事なようです…。



このように、

意見の食い違いが起こってしまう場合は、

「商談不成立」となります。

私の店では、展示もしません。



私は、何の金銭的利益も期待せずに、

写真展や絵画展をやりたいわけなのですが、

その意思を伝えますと、

「じゃぁ、何のために、やるん!?」

と、驚かれることが、あります。


しかし、

答えは至ってシンプルであり、当然です。


自分の店の壁に、美しい絵画や写真が飾ってあったら、

私は、朝から晩まで、幸せなのです。


…そもそも、

飾る人間がそのような気持ちになるために、

絵や写真を創っていると思っていたんですが、違うんですか!?



世の中には、

「貸し画商」

といった商売も、あるくらいです。

喫茶店などを経営する人たちが、

上等な絵を、安価で入手し、飾るための、隙間産業的な商売ですね。


…でしたら、

作品を展示したいアーティストさん方に、スペースを提供して差し上げれば、

双方にとって、一石二鳥この上無いと思うのですが!?



「知り合いに、画家など居ない!」

と嘆く方もいらっしゃるんですが、

「花の番犬」でお店を営んでいれば、

優れた画家の一人や二人は、

ほんの半年のうちに、見つかるでしょうに…。


『お遍路さんの集まる喫茶店』

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