エピソード3
ボクは大学卒業後は、
一転、新聞記者の道に進んだ。報道カメラマンもやった。
この業界に、
クラシック音楽を聞き分ける気品のある人間は、稀だった。
天然記念物や絶滅危惧種の特集記事を組むなら、
自分の自己紹介文でも書けば、それで事が足りそうだった(笑)
ボクは、この道はすぐに足を洗った。
なぜかと言えば、
この報道という分野の人間たちは、精神性がズタボロだったからだ。
「他人の不幸」をオカズに、飯が食えるような人間ばかりだった。
無責任に白々しい記事を書いて、悦に浸れる人間ばかりだった。
経費で風俗に通える人間ばかりだった。
全員じゃないけどね。ほとんどはそうだった。
何か事件が遭った時に、
被害者の自宅に押し寄せて、インターホンを鳴らし続ける無神経さが無いと、
務まらない世界だった。
そのような、新聞の勧誘屋みたいな図々しさこそが、
むしろ、「高く評価される」世界だった。
新聞屋の勧誘、うざったいでしょう?
あんな営業方法を推進してる人たちが、日本のメディアを牛耳ってんの(笑)
それでも、
ただただ、難しそうで堅苦しい文章を書いていれば、
国民は、信頼の置ける企業だと盲目しちゃうの。
かと思えば、
セックスと競馬の記事さえ書いてあれば、
信頼もクソもカンケイ無しに、スポーツ新聞を買う。
女性たちもまた、
「いかにヨン様の記事が充実しているか」という基準で、
女性誌を選んでいる。
報道カメラマンも、ヒドい仕事だった。
彼らもまた、「他人の不幸」を追い駆けるほどに、評価された。
困ったヒトを見かけたら、
手を差し伸べないで、写真を撮る。で、立ち去る。
「いえ、報道の使命に忙しい身なので」
と言えば、誰にも責められない(笑)
「報道の人間は高貴だ」
と、大衆は思い込んでいるから…
何よりもボクを苦しめたのは、
タバコ臭い職場だった。
火災の発生現場みたいに、煙たかった。
彼らには、繊細さのカケラも無かった。
『クラシックの革命児』
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