エピソード3 『マイウェイ -迷路の町のカロリーナ-』
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- 2023年3月5日
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私たちの学校は、お昼ごろには終わる。
ランチは学校でではなく、家で食べるのよ。
ううん。今日は家では食べないわ。
サンドイッチを持っていって、広場で食べるの。時々ね。
ヴェネチカには、サンマリノ広場っていう大きな広場があるのよ。
学校を終えた子供たちが、たくさん広場に遊びに来てる。
だったら最初から、広場で授業すればいいのにね。大人ってバカなのよ。
施設をたくさん造らないと、気がすまないの。
子供たちだけじゃないわ。大人も大勢、憩いに来てる。
私みたいにサンドイッチを食べてるか、
そうじゃなかったら眠ってるわ。昼寝してるの。
2時くらいまでずーっと寝てるわ。
そんなに休憩してて、大丈夫なのかしら?
大丈夫よ。みんな休憩してるんだもの。誰も切手買いに来ないわ。
ランチ食べたら眠くなるからね。ムリに働くより、昼寝するほうが賢いわ。
広場に面して、大きな教会があるの。サンマリノ教会。
教会には、大きな大きな鐘楼があるわ。この町で一番高い。
2時になると、ガラーンゴローンって、鐘が鳴るの。町中に鳴り響く。
それを合図に、大人たちは午後の仕事を始める。
あの鐘、誰が鳴らしてるのかしら?
いつか私、コッソリ鐘楼にもぐりこんで、
1時50分にあの鐘鳴らしてやるんだから!
そう企んでたのに、いつの間にか13歳になっちゃった!
マズイわ。そういうイタズラは12歳までにやっておかないといけないのよ。
そうじゃないと、良い大人にはなれないの。ルチアーノにやらせるしかないわね。
最近、この広場は、ただの遊び場じゃなくなってきたの。
クラシックのコンサートが開かれるのよ。
ヴェネチカに訪れる観光客が増えてきて、
そのお客さんを喜ばせるために、
広場に面した高級レストランが、コンサートをするようになったの。
毎日毎日やるわ。昼も夜も。
レストランのお客じゃなくても、演奏が聞けるのよ。屋外でやってるから。
意外なことが起きたわ。
弟のルチアーノ、コンサートに釘付けになっちゃったの。
「僕も楽器をやりたい!サックスを吹くんだ!」って言うのよ。
サックスじゃなくて、あの鐘を鳴らしてほしいっていうのにさ、
この子はぜんぜん、私の思い通りにならないの。
「サックスを買うお金なんて無い!」ってパパは反対したんだけど、
あの子ったら、角を4つ曲がったトコにある骨董品屋さんで、
安いサックス見つけてきちゃった。
ボロボロなのよ。サビついて真っ黒。でも、音は出るの。
『マイウェイ -迷路の町のカロリーナ-』