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エピソード3 『全ての子供に教育を』

エピソード3

「…で、

 『奉仕的に生きたい』ってのはホンキなわけ?」

ハックは尋ねる。

「あぁ。」

俺は、ぶっきらぼうに答える。

返答内容をYESかNOかに絞れば、余計な暴言を吐かなくて済むだろう。

いつもは新宿駅から中央線に乗るが、

今日はもう少しハックと喋っていたいから、一駅歩くことにする。

喧騒の中で呟いてるぶんには、誰も不審がったりはしないだろう。

「ホントに奉仕したいなら、

 内定もらってる次の職場、蹴っちゃいなよ?

 どーせ、仕事内容も経営方針も、今の職場と大差ないよ。

 そこでどんなに頑張ったって、残業したって、

 『奉仕してる!』なんて思えないでしょ?」

「バカ言え!」

…と反論しようと思ったが、なるほど、一理ある。

「…じゃぁ、どうすんだよ?

 駅前の葬儀屋にでも就職すんのか?」

「仕事はちょっと、一休みしたら?

 お金にならないようなこと、してみたら良いんじゃない?」

「お前、俺にニートやれって言うのかよ?

 親父に殴られるぜ。お袋に泣かれるぜ。」

「お父さんの拳の届かない場所に、逃げちゃえばー?」

「バカ言え!」

…いや、一理ある。

「それで、俺にどこで何しろって言うんだ?」

「タイかどっか、飛んでみたら?

 昔、両親に連れられて行ったことあったでしょ?」

「………。」

無視しているわけじゃない。

反論しないために、敢えて、「沈黙」を選択したのだ。

反射的に反論する前に、一理あるかどうか、考えてみる。


一理ある。

…かどうか、よくわからない。



俺は、昔を思い返してみた。

ハックの言うとおり、子供のころ、タイに行ったことがある。

親父の会社の研修旅行とかいって、家族の同行が認められた。

タイの北部、チェンマイという街に飛んだ。

親父は3日間、現地の姉妹企業に研修を受けにいった。

俺と母は、旧市街を観光しながら待っていた。

5日目からは、親父もOFFだった。

俺と親父は、

オプショナル・ツアーで、山岳民族トレッキング・ツアーなる山登りをした。

タイ北部の山奥には、昔ながらの暮らしを続ける少数民族が、

文明の利器には目もくれず、マイペースに暮らしているのだ。


発展途上国か。

超ハイテクに10年近くも囲まれていた俺にとって、

案外、良い気分転換になるかもしれない。



「でも、タイなんかに行って、何するんだ?」

「そこまでは、ボクが指示しないほうがイイんじゃないかなぁ?」

一理ある。


『全ての子供に教育を』

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