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エピソード3 『星空のハンモック』

エピソード3

昇りきった太陽が真昼の到来を告げ、私たちは家に帰ることにした。

リナちゃんはまだまだ元気で、

お花畑のチョウチョみたいに、私たちの周りを跳びはねながら歩いている。

「元気ですね。リナちゃん。」

「おかげさまで、ね。

 前はこんなに元気じゃなかったのよ?」

「そうなんですか?」

「福岡にいた頃はね。

 この子は私立で、バス通園だったし、バス停までも歩かせなかったから、

 すごく疲れやすい子だったわ。

 沖縄に来て、変わったの。

 家を出て海が見えれば、自然と海まで跳んでいくし、

 海に来てもああして、自然とはしゃぎ続けるからね。

 勝手に、自然と、体力や筋力がついていったわ。

 沖縄の珍しい木を見て、木登りもするようになったし。

 やっぱり自然の多いところで育てると、自然とたくましくなるのね。

 フィットネスも、公園の遊具さえも要らないのよ。」


「昔から、沖縄に目を付けていたんですか?」

「ううん。ホントここ最近よ。

 言ったでしょう?私はずっと、福岡で『家族ごっこ』に骨を埋めるつもだったの。

 だから、けっこう大きな家を買ってね。

 家の中も一生懸命デコレーションして、お気に入りの空間を作ったわ。

 お友達はみんな、『撮影のセットみたい!』って褒めてくれて。

 でも私は、何か納得いかないの。それで次から次へと買い足すのよ。

 子供たちの病気や不登校も、解決したくていろいろと買ったわ。

 代替療法も、すごくいろいろやったの。アロマテラピーや、レメディや、色々。

 でも子供たちはぜんぜん良くならないし、私もスッキリしないし…

 あるとき、ちょっとした小旅行から帰ってきたときに、

 普段よりも客観的に自分の家のリビングを眺めて、気づいたの。

 『モノが多すぎるんだわ!』ってね。

 私に必要だったのは、足し算ではなくて、引き算だったのよ。

 それで私、

 『シンプルに生きたい!』って、思うようになったの。

 極力、モノを持ちたくないの。

 なるべく少ない道具で、または自然のチカラで、問題を解決したいし、

 暮らしをまかないたいなって、思ったの。

 そうしたら、沖縄なのよ。」

「どういうこと?」

「たとえば、そうね。

 沖縄なら、服も減らせるの。

 沖縄に冬は無いから、冬用の服なんて少しでいいのよ。少しは要るけどね。

 同じ理由で、暖房器具なんかも要らないわ。加湿器なんかも要らないし。

 ビーチという遊び場を手に入れたから、オモチャも減ったわ。

 本とか、ヒマ潰しに関するものも減らせたしね。

 タラソテラピーを知ったから、代替医療のグッズもかなり処分したわ。

 アロマオイルとか今でも使うけど、もう最低限の数種類だけ。

 スーパーで手に入る食材も、そう多くはないから、

 あんまり凝った料理も作らなくなったわ。

 調理器具が減ったし、調味料も減ったし、

 減塩しょうゆとかあれこれ使い分けるのもヤメたしね。」


『星空のハンモック』

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