エピソード3 『私の彼は有名人』
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- 2023年3月26日
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エピソード3
色々と頭をひねってみたけれど、
私にはやはり、律儀にライブを観に行く以外に、彼に近づく方法が無かった。
私は、翌週もその翌週も路上ライブを観に行き、
そして、ライブハウスのライブも、観に行った。
ライブハウスなんていうのは、
私にとっては初めての経験だった。
とても怖いところかと思っていた。漫画やドラマでは、そういう印象を受けた。
けれども、彼の出演するライブハウスは、そんなに怖くはなかった。
アコースティックなミュージシャンの多いライブハウスは、
たいていどこも、あんまり怖くないらしい。良かった。
ライブハウスのスポットライトを浴びると、
彼はいっそう、格好良く見えた。繊細そうに見えた。
彼の番になると、
10人ほどの女の子たちが、最前列に乗り出してくる。
つまり、彼目当てのお客さんが、10人ほど居るようだった。
私は、最前列には加われなかった。
横の長ソファに腰掛け、一歩引いたところから、
ちびちびとカシスオレンジを飲みながら、ライブを観ていた。
そして、最前列の女の子たちを、見ていた。
…このコたちもきっと、彼のことがスキなんだろうなぁ。
きっと、私が抱いているのと同じような感情を、彼に向けているんだ。
ライバルが10人もいる。
私は、胸が締め付けられる思いをした。
『私の彼は有名人』