ラクダでの登山は、
最初の20分程度は楽しかったけれど、
だんだんと、苦痛になってきた…
ラクダのストロークのたんびに、 僕の股が大きく擦れちゃって、
足全体がひどく痛んだ…。
でも、
「この状態だったら、自分で歩いたって痛いだろうなぁ…」そう思って、
とにかく、じっと痛みに耐え続けた。
溢れんばかりに輝く、満天の星空に、
見とれている余裕も、なかった…
生地の厚いジーンズとかはいてたなら、たぶんそんなに痛くないんだと思うよ。
僕はとにかく、夏の海水浴場みたいなカッコしてたからさ。
痛みに耐え耐え、2時間ほど登ると、
少女は、ラクダの足を止め、僕を降ろさせた。
「ここで終了だ」という。
ラクダでの登山が途中までだというのは、
確かに、聞いてはいたけれど、
他のラクダは、まだ背中に旅行者を乗せていた…
僕は、アタマが混乱したけれど、
股の痛みから解放されるメリットを考えたら、
「別にココで終了でもイイや」と、思ったよ。
そして約束の50ポンドを手渡すと、
しかし彼女は怒って、
「No!60ポンドだ!!」 と、荒々しく言い放った。
「50ポンドしか持っていないって、さっき言ったじゃないか!」
と説明しても、
彼女はただ、声を荒げて怒るだけだった。
何から何まで、野生の動物みたいだった。
小銭をかき集めると、更に5ポンド分くらいはあったから、
それをまとめて、彼女に押し付けた。
怒り狂った野生の動物とは、
知的な議論をしても、意味がナイだろうからさ。
彼女は、それでも怒り続けたけれど、
僕に攻撃をすることは無かったし、
しばらくムシして歩き続けたら、やがて、追ってくるのも諦めてくれた。
ジャマ者が居なくなったから、
道端で少し休憩して、
体力と痛みは、多少は回復したよ。
けれども、
残りの道のりも、思いのほか長く険しく、
そして、寒さが恐ろしく厳しくて、
僕はついに、意識が朦朧としはじめてきた…
『導かれし者たち』