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エピソード48

ラクダでの登山は、

最初の20分程度は楽しかったけれど、

だんだんと、苦痛になってきた…


ラクダのストロークのたんびに、 僕の股が大きく擦れちゃって、

足全体がひどく痛んだ…。

でも、

「この状態だったら、自分で歩いたって痛いだろうなぁ…」そう思って、

とにかく、じっと痛みに耐え続けた。

溢れんばかりに輝く、満天の星空に、

見とれている余裕も、なかった…

生地の厚いジーンズとかはいてたなら、たぶんそんなに痛くないんだと思うよ。

僕はとにかく、夏の海水浴場みたいなカッコしてたからさ。



痛みに耐え耐え、2時間ほど登ると、

少女は、ラクダの足を止め、僕を降ろさせた。

「ここで終了だ」という。

ラクダでの登山が途中までだというのは、

確かに、聞いてはいたけれど、

他のラクダは、まだ背中に旅行者を乗せていた…

僕は、アタマが混乱したけれど、

股の痛みから解放されるメリットを考えたら、

「別にココで終了でもイイや」と、思ったよ。

そして約束の50ポンドを手渡すと、

しかし彼女は怒って、

「No!60ポンドだ!!」 と、荒々しく言い放った。

「50ポンドしか持っていないって、さっき言ったじゃないか!」

と説明しても、

彼女はただ、声を荒げて怒るだけだった。

何から何まで、野生の動物みたいだった。

小銭をかき集めると、更に5ポンド分くらいはあったから、

それをまとめて、彼女に押し付けた。

怒り狂った野生の動物とは、

知的な議論をしても、意味がナイだろうからさ。

彼女は、それでも怒り続けたけれど、

僕に攻撃をすることは無かったし、

しばらくムシして歩き続けたら、やがて、追ってくるのも諦めてくれた。


ジャマ者が居なくなったから、

道端で少し休憩して、

体力と痛みは、多少は回復したよ。

けれども、

残りの道のりも、思いのほか長く険しく、

そして、寒さが恐ろしく厳しくて、

僕はついに、意識が朦朧としはじめてきた…



『導かれし者たち』

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