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エピソード4 『「おとぎの国」の歩き方』

僕はコルカタの喧騒に飽きると、

さらに北東の町ビハーリーに向かうことにした。

ビハーリーなんて、観光客は誰も行かないだろうけどね。

何でビハーリーかって?

ブータンに入国できる可能性があるからさ。


ブータンって知ってる?

「アジア最後の秘境」とか言われてる、マイナーで質素な国だよ。

よく知らないけど、質素で田舎な国さ。ラオスよりもさらに田舎だよ。

なにしろ、1999年まで、テレビが禁止されてたらしいからね!

そりゃいいコトだよ。なぜって?

人間、テレビを観るようになっちゃったら、みーんなアメリカのマネしはじめるからさ。

みーんな、どこもかしこもアメリカナイズされてっちゃう。個性が死ぬんだ。

アメリカナイズってわかる?

iPhoneとマックとスタバとナイキで埋め尽くされちゃう現象のことさ。

だから、テレビを観てない人たちの暮らしなんてのは、楽しいさ。個性がある。

テレビはさらに、あっちこっちの秘境を紹介しちゃうから、

飛行機が飛び交うこの時世、秘境なんてほとんどありはしないんだけど、

ブータンって国は、外国人観光客を煙たがる国なのさ。

入れないこともないけど、

旅行会社で予約して、ガイド付き添いじゃなきゃ入国できない。

入国したって、常にずーっとガイドの監視下でなきゃ、観光できない。

そのクセべらぼうな料金を取るから参加者はそう多くなく、今だにけっこう、秘境だよ。

チベットよりもさらに、観光客が少ないんじゃない?

別に、ただブータン観光したいだけなら、金払ってツアーに参加したらいいんだ。

でも僕は、それじゃ物足りなかったんだよね。

観光客の踏み荒らした道だけ歩いたって、面白くないさ。

ツアーガイドの知ってる町だけ歩いたって、面白くないさ。

だから僕は考えた。

それで、ビハーリーってわけさ。

ビハーリーからは、ブータンへ続く道が伸びてるんだ。

陸路で、ブータンに入国できるんだよ。たぶん出来る。

何かしら、抜け道があるんじゃないかってさ。


そして僕はまず、コルカタのサダルストリートから、

北駅を目指すことにしたんだ。

ビハーリー行きの列車は、コルカタ郊外の北駅から出てるんだよ。

北駅までは、リキシャで行こうと思ったら、そうもいかなかった。

ちょっと距離があるから、まともなタクシーに乗ったほうが良いと言う。

仕方ないから、まともなタクシーとやらを探して、大通りを歩く。

「タクシー?タクシー?」と声を掛けられるから、振り返ってみると、

どれも白タクばかりさ。自家用車でタクシーのマネ事してんだよ。

黄色い正規のタクシーを見つけて、乗り込んでみるけど、

料金メーターは壊れてる。結局、白タクと変わらないんだ。

白タクのほうが立派な車持ってる場合もあるから、

正規か白タクかなんて、あんまこだわんないほうがイイよ。

北駅までの相場は500ルピーだってことだから、

400ルピーでOKだというヤツが見つかるまでは、粘ったよ。

で、その400ルピーの車に乗ってみたんだけどさ。

乗ってみたら、妙なことを言うんだ。

「うーん。今は工事中みたいだなぁ。迂回しなきゃならない。

 距離が長くなってしまうから、600ルピーに変更だよ。いいね?」

うっっっさん臭い顔で言うんだ。ダンスミュージックとかガンガンかけてさ。

「は?工事って何?」

「知らないよ。オレは工事夫じゃないさ。

 とにかく、何か工事してて渋滞してるから、

 迂回しなくちゃならんのさ。600ルピー、いいね?」

「よくないよ!約束と違うってんなら、降りるさ!」

僕は、すでに走りはじめてる車のドアをこじ開けて、

強引に車から飛び降りた。

よくあるんだ。この手口。

だいたい、実際に工事中だったりお祭りしてたりで通行止めになってて、

それでまんまと信じこんじゃって、ヘタな額、払わされちゃうのさ。

僕は他の白タクを拾って、なんとか相場額で北ターミナルまでたどり着いた。

タクシー乗るときは、荷物をトランクに入れちゃいけないよ?

常に自分で抱えてたほうがイイ。いつでも降りれるようにさ。


君、「おとぎの国」に行きたいんだっけ?

君がもし、リキシャにダマされちゃうような人なら、水先案内人が必要だろうなぁ。

アリスだって、シルクハットかぶったウサギについていったろう?

ああいうのがいないと、道に迷って途方にくれるさ。

少なくとも、インドを抜ける程度のとこまでは、

誰か歴戦の猛者に守ってもらったほうがイイよ。



『「おとぎの国」の歩き方』

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