エピソード4 『大家族』
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- 2023年4月3日
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エピソード4
ミユが5歳のとき、マユは離婚した。
やはり、旦那側の不倫がその原因であった。
マユの旦那は信心深いし、仕事もとても真面目にこなしていたので、
彼の不倫については、誰もが驚きを隠せなかった。
多くの親は、幼い子には不倫という事象を隠したままにしておくが、
マユはそうではなかった。
「あなたのパパは、違う女性に恋したのよ」と、正直に話した。
それ以外には、旦那の文句や悪口を言ったりはしなかった。
それどころか、「パパは優しい」「パパは真面目」ということを、
しょっちゅうミユに言って聞かせていた。
実際、およそ何も、不満を感じてはいなかったから。
今どきの幼稚園児たちは、愛や恋について、驚くほど理解している。
浮気や不倫という言葉についても知っているし、それが悪いことであるのも、理解している。
周りの人々は、不倫したミユの父を「悪人だ」と非難したが、
ミユはそうは感じていなかった。
マユが感じたように、ミユから見てもパパは優しい人間であり、真面目な人間だったからだ。
ミユは、「真面目な人間でも、ママ以外の女性に恋したくなるものなんだな」
というふうに率直に捉えていた。
そして、それが至極あたり前だと思った。
ママはテレビを見ながら、様々な俳優さんにウットリしているし、
幼稚園の先生たちも、様々なアイドルのうわさ話をしている。
ほし組のヒナちゃんもクルミちゃんも、
ヤっくんにしようかマサくんにしようか、いつも決めかねている。
みんな、パパと同じである。
マユがあまりテレビを観ないため、ミユは年齢の割りに世間知らずであった。
しかしそのぶん、世間の固定観念にしばられない傾向にあった。
父の件に関しても、
「不倫=悪」というふうに、即座に思い込んだりはしないのだ。
『大家族』