エピソード4
彼は、名前をタッ君といいました。
タッ君は、私をそのまま家まで持って帰りました。
そして、私ごときに名前を付けてくれたのです。
私は、紺色がかった黒い石でした。
彼は、私の色を、名前に引用したかったようです。
「紺色」という単語を、わざわざ和英辞典を引っ張りだしてきて、調べてくれました。
「ネイビー」
彼が名づけてくれた、私の名前です。
タッ君は次に、お母さんのもとへ駆けよっていきました。
そして、「お守りの袋、ない?」とねだります。
残念ながら、そんなものはタッ君の家にはありませんでした。
お母さんは、袋の使い道が私だとわかると、
ほほえましく笑い、そして、お裁縫の道具箱を取り出しました。
小さな小さな巾着袋を、私のために、作ってくれたのです。
タッ君は、私の入った巾着袋を、ズボンのポッケに仕舞いました。
その日だけではありません。
なぜか彼は、毎日毎日、ズボンのポッケに仕舞うのです。
いつもいつも、私を連れて歩いてくれるのです。
毎日彼氏とデートしている幸せな女性は、
世の中にどれほど居るでしょう?
私は、幸運なその1人だったのです。
100年もの間、誰にも見向きもされなかった者が、
名前を授けられ、お家を授けられ、肌身離さず抱きしめてもらえている…
これがどんなに幸せなことか、おわかりでしょうか?
『守護天使 -愛と奉仕の物語-』
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