エピソード4 『私の彼は有名人』
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- 2023年3月27日
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エピソード4
彼は、1~2ヶ月に1度くらいのペースで、ライブハウスに出演した。
2回行って3回行くと、わかった。
どうも、彼のお客さんは、毎回固定のメンバーで、いっこうに増えていかない…
なぜだろう?
彼の音楽は、とても素晴らしいのに。
私は、昔バイオリンをやっていたので、
彼の音楽が、音楽芸術としても一級品であることが、よく解る。
3回目のライブでは、そういう点に注目して、眺めてみた。
「集客能力の差」を計りながら、対バンのミュージシャンたちも眺めたのだ。
そして、気付いたことがあった。
他の、ファンの多いミュージシャンは、愛想がとても良い。
MCでも、ファンの女のコを名指しでいじったりするし、
演奏終了後には、わざわざ自分で、アンケート用紙を手配りしている。
自分のファンのコにもそれ以外のコにも、
満面の笑みで話しかけ、冗談を飛ばしまくっている。
そうか。
音楽以外の部分で、集客に大きな差が出るのだ。
私は、生意気であるのを承知で、
彼に、その気付きを話してみた。
「あのバンドのボーカルさんみたいに、
お客さんにお愛想してみたら良いんじゃないですか?」
と。
喜んでもらえるかと思ったのに、そうもいかなかった。
彼は、困惑の表情を浮かべて言う。
「それがファン獲得に有効なのはわかってるんだけど…
僕はホストがやりたいんじゃなくて、音楽で勝負したいから…」
私は、自分の浅はかな助言を、ひどく恥じた。
『私の彼は有名人』



