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エピソード4 先生はホームレス

エピソード4 先生はホームレス


「あ、ほら、いたわ!ウィリアムスさん。」

ナンシーの指差したその先にいたのは、

なんと、真っ赤な口紅をぬりたくっている中年男性であった。

「やぁナンシー。今日はえらくゴキゲンそうじゃないか?

 それと、えっと、初めての子かな?」

「そうよ。最近越してきたの。彼女、ミシェルっていうの。」

ナンシーは、ミシェルの肩を両手で突き出した。

「……あ、あ、はじめまして。」

ミシェルは引きつり笑いを浮かべ、動揺(どうよう)している。

「あははは!コレ?ビックリするよね!そりゃそうさ。

 僕?オカマじゃないよ?

 今、リリィたちに口紅のぬり方を教えてたのさ。

 こう見えて僕、昔クラウンをやってたからね。道化師(どうけし)。ピエロさ。

 そこらのハイティーンよりも口紅にはくわしいよ。はははは!」

ウィリアムスは口紅を手の甲でぬぐい、ミシェルに握手を求めた。

「言ったでしょ?ヘンな人なのよ。とびっきり面白いけど。」

「ピエロだなんて聞いてないわ。」ミシェルは肩をすくめた。


「ミシェルだっけ?いい名前だね。

 かしこそうな顔してるよ君。

 アレだろ?『指輪物語』借りに行って、引き止められるタイプだろ?」

「!!

 なんでわかったの!?おじさん魔法使いなの!?」

「あははは。魔法使いは僕の祖母(ばあ)さんだよ。僕は魔法使いじゃないさ。

 何でわかったかって?そりゃアレだよ。僕も昔そうだったからさ。」

「ふぅん。ウィリアムスさんは、

 社交辞令(しゃこうじれい)のネタが100個ぐらいポッケに入ってるのね。

 ビックリしてソンしちゃったわ。私のこと、学校の先生かだれかに聞いてたんでしょ?」

「ちがうよ!学校の先生なんかここには来やしない。

 ホントにカンで言ったんだ。君の目、昔の僕にソックリだからさ。」

「まぁいいわ。学校よりは楽しそう。

 それで、

 ウィリアムスさんはピエロだったの?ホームレスって聞いたけど…」

「そうだよ。ホームレスだしピエロだよ。

 それに、自動車関連の会社もやってたよ。社長ってやつだ。」

「社長さん!?社長さんなのにホームレス!?株で失敗でもしたの?」

「失敗しないよ。やらないから。株は僕には向かないさ。

 ホームレスだけど、別に一文無しってわけじゃないのさ。

 会社の社長よりもホームレスのほうが面白そうだったからね。それだけさ。」

「え!?社長よりも!?」

「そうだよ?社長なんてつまんないさ。サラリーマンもね。

 まず第一に、苦痛だよ。オフィスワークってのはウソつき合戦だからね!

 そんなの胃が痛くなるだけで、楽しくもなんともないさ。

 ウソなんかつきまくって、イエス様に顔向けできないぜ?

 日の出前から教会行ったって、ザンゲしきれなくなっちまう。

 社長やめたいなって思ってたときに、たまたま出会ったホームレスがさ、

 イイヤツだったんだ。彼も元社長だよ?」

「えー!?」

「めずしくないよ?ホームレスの中には、元社長が多かったりするよ。

 社会に嫌気が差して、ホームレスやるんだ。

 社会の黒さをこれでもかってほど垣間(かいま)見てきたからね。

 国に税金はらうなんてバカバカしいから、ホームレスになるのさ。」

「ふぅん。」

「ホームレスって面白いよ?みんな優しい。たいていはね。

 初対面の僕にテントの張り方教えてくれたり、食料分けてくれたり、ね。

 面倒見が良いんだ。とっても。」

「ね、おもしろいでしょ?

 学校じゃ聞けないハナシ、ウィリアムスさんからはいっくらでも出てくるわ。」

ナンシーは、ウィリアムスの上着のポケットに適当に手を突っ込んで、

そこにあった小さなびっくり箱をミシェルに押し付けながら言った。



『ミシェル』

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