エピソード5
私は多分、人より自立的だし思いやりある人間だと思う。
その心を育んでくれたのは、やはりおばあちゃん育ちの境遇であると思われる。
おばあちゃんは私にとって、家族同然の存在ではあるが、
かといって、家族ではない。
やはり私にとって、母とおばあちゃんとでは、距離感が微妙に異なる。
母に対しては言えたワガママも、おばあちゃんに対しては、言わない。
おばあちゃんは何があっても怒らないし、寛大であるのもわかっていたが、
でも、私は自ら配慮し、自重した。
「甘えすぎちゃいけないよな」という思いは、
私を我慢強くし、優しくし、自立的にした。
周りの子たちが、雨の日に駅まで車で迎えに来てもらっていても、
私は自分の足で、家まで帰った。台風が来ても、自分で歩いた。
何回かは車を出してもらったこともあったが、そういうときは泣くほど感謝した。
周りの子が、「遅かったじゃん!」と文句を垂れながら車に乗り込んでいても、
私は、おばあちゃんに抱きついてただただ感謝したことしか、無かった。
とにかく、
おばあちゃんに何をしてもらっても、「当たり前」だなんて思わなかった。
本来、私を養育する義務など無い人間なのだ。
私は本来、何でも自分でやらなければならないのだ。
それなのにおばあちゃんは、あれもこれもやってくれているのだ。
すると、仮に何もしてくれなくても、そこに不満は感じないし、文句も出ない。
だから、どんな些細なことであっても、施してもらったなら感謝の気持ちが溢れだす。
こうした思いは、次第に、おばあちゃん以外のあらゆる人にも向けられるようになった。
友人も恋人も誰も彼も、私のために何かをする義務はなく、義理も無いのであって、
だから、
誰かが私のために何かしてくれるたびに、私は胸を震わせて喜び、目を潤ませて感謝を告げた。
『おばあちゃん子の輪廻』