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エピソード5 『小さな大ちゃん』

  • 執筆者の写真: ・
  • 2023年4月6日
  • 読了時間: 2分

エピソード5

オレは、

どうやったら「縁の下の力持ち」になれるか、考えた。


けれども、

オレはあんまり頭が良くなかったから、

頭脳で役に立てる気配は、無かった。

オレが自慢できるのは、スポーツくらいだった。



中でも、オレは、球技が好きだった。

サッカーとドッヂボールが、特に好きだった。

サッカーは、点を決めるとチヤホヤされた。

ドッヂボールは、ボールをぶつけると快感だった。

だから、3年生までのオレは、

前に出て、力いっぱいボールを蹴ったし、

前に出て、力いっぱいボールを投げていた。



でもオレは、

4年生からは、スタイルを変えた。

前には出ないことにした。



サッカーでは、バック(昔はデフェンダーとは呼ばなかった)に徹した。

「体の小さなバック」なんてのは、聞いたことが無い。

強豪のクラブチームや部活に行ってしまうと、

オレの体では、バックはやらせてもらえないから、

弱小クラブチームで、朗らかに笑いながら、サッカーをやっていた。

あとは、学校の授業や休み時間で、夢中になった。

何の賞状も貰えなかったけど、それで良かった。


バックはバックで、

「味方の失点を防ぐ快感」が、ある。

キーパーが絶体絶命のピンチの時に、

自慢の快速を飛ばして、蹴り手にスライディングしていったり、

打たれたシュートを、キーパーのいない側ではじき返すのは、

この上ない快感だった!

むしろ、点を決めることより、楽しくなってしまった!



点を決めることは、「攻撃」と言われる。

銃も刀も持っていないけれど、「攻撃」には変わりない。


実際、

フォワードをやりたがる人間には、攻撃的なヤツが多い。

暴力的なヤツが多い。

他人を、巧く出し抜きたがるヤツが多い。

簡単に言えば、「性格の悪いヤツ」が多いのだ。


けれども、一般大衆は、

ゴールを決めるフォワードばかりを、持てはやしている。

ハデだからだ。

ムカイくんの言葉を使うなら、

一般大衆は「人の頑張りを見れる人間」では、ないのだ。



サッカーにおいて、

もちろん、フォワードは頑張っている。

けれども、他の選手も、同じように頑張っている。

フォワードだけがヒーロー扱いされるのは、おかしいし、

フォワードの給料が一番高いのも、おかしい。


オレも、小3の頃までは、

そんな「一般大衆」の一人だったのだ。

でも、今は違う。変わったのだ。


『小さな大ちゃん』

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