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エピソード5 『星空のハンモック』

エピソード5

数日のあと、

ついにこの静かなプチ・ペンションにも、新たなお客さんがやってくる。


夜もどっぷりと暮れていて、

リクくんもリナちゃんも眠った後だった。

ピンポーン、ピンポーン。

「誰かしら?こんな遅くに珍しい。」

麗子さんが表に出てみると、そこにいたのは自転車を引いた青年。

肩には大きなリュックサックと、楽器か何か、長細い形のケースも提げている。

「はーい。どうしました?」

「あの、ここって民宿ですか?そう聞いたんですけど…」

「民『宿』ではないですけど、民泊をやっていますよ。」

「民泊?なんスかそれ?」

「えぇと、民宿みたいなものです。安宿ですよ。」

「良かった!僕、泊まるところ探してるんです。

 沖縄にはいっぱい安宿があるって聞いてたんですけど、

 那覇にはいっぱいあるのに、こっち側にはぜんぜんなくて、焦りました!」

「探し回って大変だったのね!どうぞ、入って!」

彼は律儀に端っこに自転車を停め、中に入ってくる。

そして私がそうだったように、リビングの麗しさに唖然とする。

「うわー!めっちゃ姫じゃん!

 ちょ、これ、男が泊まってもいいんですか?ごめんなさい、なんか。」

「ウフフ。いいんですよ。

 男性用のドミトリーもご用意してありますから。」

彼は、部屋を得たことに安心すると、

シャワーを浴び、そそくさとベッドに入ってしまった。疲れていたらしい。



朝起きると、

突如現れたお客さんに、子供たちは大興奮。

特にリナちゃんは、モジモジしながらも気になって仕方がない様子。

彼が昨夜、リビングに置き忘れていた楽器ケースを見て、

「お母さん、これなぁに?三線じゃないの??」

「ウフフ。お母さんにじゃなくて、カツミくんに聞いてごらんなさいよ。」

リナちゃんはモジモジしている。

「あはは。ごめんね、期待外れで。

 これは三線じゃなくて、トラベルギターなんだよね。アコギだよ。」

「弾けるの??」リナちゃんは尊敬のまなざしで、カツミくんを見上げる。

「まぁね。大して上手くないけどさ。」

カツミくんは朝食を放り出して、

リナちゃんのリクエストに応えてギターを取り出す。

チューニングを確かめ、ポロロンとやると、

短い歌を1曲、私たちに披露してくれた。

「貸して貸して?」リナちゃんは今度は、自分で触わりたがる。

自分の好奇心に対して、とても素直な子なのね。


「ギターを背負って、自転車で旅しているの?」麗子さんが尋ねる。

「うん。そうなんです。チャリダーってやつです。」

「チャリダー?」ようやく私も、口を挟む。

「ライダーのチャリンコバージョンですよ。チャリンコでツーリングしてるんです。

 沖縄一周したら、その後は本州縦断して、北海道も一周するつもり。」

「すごい!日本一周っていうこと!?リクくんが食いつく。

「そうだね。日本を一周するつもり。」

こうしてカツミくんは、瞬く間にみんなの興味をさらってしまった。


『星空のハンモック』

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