エピソード5
そして私は、
母の勧めどおり、小旅行に赴くことにしました。
新幹線を乗り継いで、大分駅までは順調でした。
ここまで来ればもう、着いたも同然です。
大分駅から別府までは、豊本線でほんの数駅なのだから。
しかし、私は、
こともあろうか、電車を乗り間違えてしまったのです。逆行きに乗っていました。
幸いにも、3駅ほど逆走して、間違いに気付きます。
鶴崎駅であわてて電車を飛び降りた私は、珍しく半ベソをかいて、
悲劇のヒロインぶって天を仰ぎました。
「ホントに病んでるのかも」
かなりブルーになりました。
電車を乗り間違えるなんて、私らしくありません。
エミコ先生には、
21時にスタジオでお会いしていただくよう、約束を取り付けてありました。
時間が迫っているものだから、電車の乗り間違いは、私を痛く動揺させました。
そして、こういうときに限って、不幸が追い討ちをかけるものです。
なんと、豊本線は、人身事故により、別府方面行きが遅延していたのです!
私は、肌寒く薄暗くなってきたホームのベンチに腰掛け、とにかく電車を待ちました。
『自由の空へ』