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エピソード6 『アオミ姫』

エピソード6

「お供ってあなた、

 あなたも一緒に、城から脱走(だっそう)するつもり!?

 家来(けらい)が脱走したら、打ち首なのよ!?」


「は、はい…。

 知っていますとも。

 でも、

 私にとって、あの城は、

 すでに、ゴウモンと同じようなモノなのです…」


「どういうこと!?」


「私は、

 父が貴族(きぞく)ですから、あの城に奉公(ほうこう)に出されたのです。

 父が、勝手に決めたことなんです。

 私は、お城暮らしよりも、歌を唄って暮らしたいのに…」


「それであなた、

 お遣いばっかり、買って出ていたワケ!?」


「まったくその通りですぅ。」


「…ふうん。

 おたがい、苦労してんのねぇ。

 いいわ。

 あなたも、私のお供にしてあげる♪」



一行は、

なおも、森の中を歩いて行きました。


「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ…

 ねぇ、ちょっと!フラミース?

 私のこと、おんぶしてくださらない?」


「えー!?

 姫様?私は、姫様よりも体が小さいのですが…」


「もー!!役立たずねぇ。

 あなたもう、お供にしないわ!

 一人でどっかに行っちゃいなさいよ!」


「えー!?

 あ、はい。かしこまりました…。

 さようなら、お姫様。」



フラミースは、その場に立ち止まりました。

姫たちが見えなくなるまで待ち、距離(きょり)をおくことにしたのです。


姫とホトミは、再び歩きはじめました。



やがて、

分かれ道に出くわしました。

親切に、立て札が立っています。

…しかし、

姫は、字が読めません。

国語の勉強の時間になると、いつも、

「アタマが痛い病」になるので、字の学習が進んでいないのです。


「どうしよう…困ったわ。」


「ハハハ。

 困ったなぁ、姫さん。

 どうしたらエェんやろなぁ?こういう時。」



しばらく立ち往生(おうじょう)していると、

メイドのフラミースが、追いついてしまいました。


「まぁ!姫様。

 どうされたのですか!?」


「い、いや?どうもしないわよ。

 ただ休憩(きゅうけい)してるだけよ。

 アンタ、先に行ってしまいなさいよ!」


「あれぇ?

 行かせちゃってエェんかなぁ。

 フラミースは、姫さんにとって、救世主(きゅうせいしゅ)やでぇ?

 字、読めるさかい。」


「じゃぁ、私、

 先に行かせていただきますね…」

フラミースには、ホトミの声は聞こえてないらしい…。


「あー!行ってまう!!

 唯一無二(ゆいいつむに)の救世主がぁ…!!」



姫様は、アタマが混乱(こんらん)してしまいました。

でも、とにかく、

フラミースを逃(のが)してはマズいことだけは、理解できました。


「ちょ、ちょっと!

 待ちなさいよ!フラミース!待ちなさい!」


「え?

 なんでしょう?姫様。」

フラミースは、ふり返って首をかしげました。


「あれぇ?

 そんなエラそうな言い方で、エェんかなぁ?

 姫さん、助けてもらう立場やでぇ?

 どっちが、エラいんかなぁ?」


「ちょっと!フラミース…ちゃん。

 アオミのこと、助けなさい…って下さいよ…?」


「は?

 姫様?何を言っておられるか、よく聞き取れないのですが…」


「フラミース…ちゃん。

 アオミのことを、助けて…ください…。」


「おほほー!

 言えるやないかー♪」


「姫様?お困りごとなのですか?

 休憩中だとおっしゃっていましたが…」


「いえ、あの、その…

 休憩中っていうのはウソで…

 実は、あの、その…

 立て札が読めなくて、道がわからなくて…」


「えー!姫様!?

 毎日、この国最高の家庭教師が、城に参(まい)られておりますのに!?」


「それはそうなんだけど…

 その…アオミは、アタマが痛くて…」


「頭痛持ちなのですか?

 この国最高の医者と、この国最高の万能薬(ばんのうやく)が、

 用意されていたはずですが…」


「あ、いや、その…」


「ホレ!姫さん!

 まーだ、ウソ付き続けるんかいな?

 助けてもらう相手に、ウソ付いてエェんかなぁ?うーん。」


「もー!アンタはダマってなさいよ!!」


「え!?

 姫様、もうしわけございません!!

 わたくしフラミース、もう、先を急ぎますね!!」


「あーーー!!

 ちょっとちょっと!フラミース!

 あなたに言ったんじゃナイのよ!!」


「え!?

 さっきから姫様、

 言っていることが支離滅裂(しりめつれつ)なのですが…」


「あー、ごめんごめん…なさい。

 気が動転(どうてん)しているの。


 私、字の勉強をサボってばかりいたから、

 立て札の字が読めなくて、困っているの。

 それで、助けてもらいたくて…


 …あれ?

 でも、フラミースも女性だから、

 字の勉強はしていないのよね…」


「いいえ?

 私、アオミ姫くらいの年ごろには、

 読み書き計算、出来ましたけども…」


「えー!?

 あなた、家庭教師が付いていたの!?」


「いえ?

 私の父は、家庭教師なんぞ、付けてくれませんでしたわ。

 『皿洗いが字を読める必要など、無いわ!』

 っていうのが、口グセでしたから…」


「それじゃ、

 誰に字を教わったの?」


「母が。父にナイショで、教えてくれたんです。」


「そうなの…。

 あなたは、お母様が教育ママさんだったのねぇ。

 かわいそうに…」


「いえ?

 私が自分から、『教えて』とお願いしたのですよ?」


「え!?

 あなたのお母様は、

 字のお勉強のゴホウビに、どんなオモチャをくれるの?

 うらやましいわ!さぞかし珍(めずら)しい舶来品(はくらいひん)なのね!?」


「いえ?

 字をお勉強しても、ゴホウビなどもらえませんが…

 逆に、私が、母の肩もみをする決まりなんです。」


「えー!?

 あなた、ゴホウビもなくて、仕事をしなくちゃならないのに、

 字のお勉強をしたの!?」


「はい。そうですが…」


「どういうことなの!?

 他の大人が、ゴホウビをくれるの!?」


「いいえ、姫様。

 他の誰も、ゴホウビをくれませんわ。

 私は、字の勉強がしたいから、

 肩もみと引きかえでも、お願いするのでございます。」


「…どうして??」


「だって、字が読み書きできたら、面白いじゃないですか♪

 たくさんの物語が、読めますわ♪

 物語が読めると、

 知らない国の、知らない人々の生活も、知れますわ♪」


「…それって、

 お人形さん遊びよりも、面白いモノなの?」


「もちろんですとも!

 お人形さんは、1つで飽(あ)きてしまいますが、

 物語は、100読んでも、飽きませんわ♪

 まるで、自分の人生が、100個あるみたいですわ!!」


「字が読めたら、そんなに楽しいコトがあったなんて…」


『アオミ姫』

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