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エピソード6 『ミシェル2 -世界の果て-』

エピソード6

私は翌日、秘密基地に行ったわ。ウィリアムスさんに会いたくて。

教会で出会ったレオのこと、話したの。

「私、ひょっとして彼が『運命の人』なのかなって思ったの。

 でも違うのね。ちょっと残念。」

「そうかい?案外そのレオくんかもしれないよ♪」

「だって彼は、遠く離れたところに住んでるのよ。」

「そうだよ。『運命の人』って、そういうもんさ。」

「え!?」

「『運命の人』ってのは、生まれた町にはいないのさ。

 苦労しなきゃ巡り合えない仕組みになってるんだよ。」

「それなら大丈夫よ。

 私、生まれた場所はロンドンでしょ?ここじゃないもの。」

「生まれた町っていうか、母親から離れなきゃいけないんだよ。

 母親が引っ越ししそうな土地なんて、生まれる前から見当つくからね。

 そんな場所に『運命の人』を配置するほど、神はマヌケじゃないさ。」

「私の『運命の人』は、この町にはいないってこと?」

「そうだよ。きっといないさ。

 たぶん、その彼だろうな。きっとそうだよ。」

「本気!?何を根拠に言うの!?」

「『運命の人』ってのは、女にとって、『成長させてくれる人』なんだ。

 すっごく似てる感性をしていつつも、尊敬できる何かをさらに持ってる。

 ミシェルはご覧のとおり万能な子だけど、旅だけはしたことないだろ?

 その彼はミシェルと似たような価値観をしてて、さらにキミのできない旅が出来る。

 さらに、彼はキミより年上だろう?どうだった?」

「たぶんね。年齢は聞いてないからわかんないけど、10コぐらい私より上だと思うわ。」

「『運命の人』ってのは、

 女にとって、たいてい相手の男のほうが年上なんだよ。

 同年代の男って幼く感じるだろう?

 それじゃ尊敬の対象にならないからね。」

「かといって、

 10コも離れてたら普通、恋愛対象にならないんじゃない?」

「『普通』は、そうかもしれないよ。

 でも『運命の人』との恋愛は普通じゃないさ。

 普通の人生に納まっていたい臆病な人は、

 『運命の人』とは恋愛できない仕組みになってる。

 神は色々考えてんだよ。最高のゴホウビは簡単には手に入らないようにしてる。

 『運命の人』とのデートはサイコウだけど、

 でも何かしらの普通じゃない障壁があって、

 それを乗り越えなきゃ恋愛できない仕組みになってるんだよ。

 だから年齢が10コも離れてたり、20コも離れてたり、

 母親の昔のオトコだったりもするわけさ。

 会社の上司であることはないな。それはただの不倫だ。」

「へぇ。」

「まぁ『運命の人』なんかどうでもいいんだけど、

 とにかく人ってのは、母親から離れてこなきゃいけないのさ。

 成長することが目的だからね。人生ってのは。

 母親から離れなきゃ強くはなれないし、人生が本格的に始まりはしないんだよ。

 母親の顔色うかがってたら、できないことは幾つもあるだろ?」

「ママから離れるの?」

「そうだよ。不安かい?」

「そうね…。私、一人で生きていけるかしら?」

「そう不安に思ううちは、やっぱり親から離れて生きなきゃならない。

 もちろん、この秘密基地で暮らしたって意味ないよ?

 ここはミシェルの家みたいなもんだからね。」

「はぁあ。」

「良かったじゃないか?」

「え?」

「やりがいのあるゲームが見つかってさ♪

 人生にハリがなくて、困ってたんだろう?」

 


それから私は、アルバイトをするようになったわ。

親元離れて暮らすのに何が一番必要かって、お金だもの。

お金っていうか、「お金を稼げる力」が必要よね。

お金があったって、それがなくなっちゃったら暮らせないもの。稼げる力がなくちゃ。

大学の近くのスーパーで、レジ打ちの仕事をしたの。

おっそろしく忙しいのよ!

朝から晩までずーっと列が絶えないの!私めちゃくちゃ貢献してるわ。

それなのに、それなのによ?

お給料は時給100マルッカしかもらえないの。10ドルよ。

お店の売り上げ、1時間に10万マルッカもあるのに、

それでも、一番体動かしてる私のお給料が、100マルッカ!?

ウィリアムスさんが「働くのはバカらしい」って言ってた意味が、理解できたわ。

お金稼がないで自分たちで作ったり交換した方が、ずっと効率がいい。

なんでみんな、秘密基地みたいな暮らししないの?


私、またウィリアムスさんのところに行ったわ。

「働くってこんなに大変なわけ!?

 私、これに耐え続けなきゃいけないの!?」

「ははは。ご苦労さん。気持ちはお察しするよ。

 ミシェルが今の環境で学べることは、2つある。

 1つは、『理不尽な苦労にも耐えること』だよ。

 それは少なからず、どんな国のどんな環境に飛び込んだって必要なスキルなんだ。

 もう1つは、『待遇改善を求めて運動を起こすこと』だね。

 お給料を上げてもらったり、人員を増やして負担を軽くしてもらったり、

 1時間に10分くらいは休憩をもらえるようにしたり、さ。」

「それならもうやったわ。

 お給料を上げてとは言えなかったけど、

 人を増やしてもらうことは頼んだし、休憩時間も貰えるように頼んだわよ。」

「それで、どうなった?」

「『求人は常にやっているが、応募がないからどうしようもない』だって。

 休憩時間だって、人手に余裕があればあげられるって。」

「ふむ。よくある話だ。」

「それで、次はどんな手を打てばいいわけ?」

「そうだなぁ。他のスタッフも巻き込んで、ボイコットでもするか。

 そうすりゃ時給を1.5倍にしてでも求人を強化するさ。」

「それももうやったわ。

 ボイコットはしてないけど、その相談は持ちかけてみたの。

 でも他のスタッフは『面倒くさい』しか言わないのよ。」

「そうか、全部やったか。さすがミシェルだな。

 だったらもう、その理不尽な環境に耐え忍ぶゲームをするしかないな。

 それか、店を変えてみるか?他の会社ならもっと楽かもしれないよ。」

私はウィリアムスさんの言うとおりに、働く場所を変えることにしたわ。

今度はテミス教会の近くのパン屋さんにしてみたんだけど、

かといって、あんまり違いはなかったわ。

でもおかげで、体力はついたみたい。働くっていうことは、私にもできそう。


『ミシェル2 -世界の果て-』


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