エピソード6
植物としての生は、オランダで行われました。
国の名物とも言える大チューリップ畑の中に、私もいました。
花としての人生は、
小石よりもずいぶんと賑やかです。
たくさんの人間が、私たちの美を褒め称えてくれます。
その顔を5センチの距離まで寄せ、キスやほおずりをしてくれます。
お家まで連れかえってもらえる機会も、多いです。
毎日お世話をしてもらい、
枯れても尚、キッチンの片隅にぶら下げてもらえたりします。
人間に注目されないような場所に咲いていても、
それでもやはり、賑やかです。
チョウチョやミツバチのお友達が、毎日遊びにきてくれるからです。
私たち草花は、
たくさんのチョウチョやミツバチと、セックスを交わします。
…意味がおわかりですか?
おしべやめしべは、人間でいうところの性器に当たります。
花の蜜は、精液です。
人間は、大人になると性器を隠してしまいますから、
セックスの機会はあまり多くありません。
しかし花々は、ある程度のお年頃に達すれば、
めいいっぱい花弁を広げ、性器を露わにし続けます。
花の開花というものは、人間でいえば、とてもセクシーなポーズなのです。
植物としての生は、
花が枯れ、茎が朽ち果てることで、終わりを迎えます。
石よりもずっと早く、その生が終わるのです。
しかし、
石よりもずっと充実し、快楽に満ちた一生なのです。
『守護天使 -愛と奉仕の物語-』
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