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エピソード6 『小さな大ちゃん』

  • 執筆者の写真: ・
  • 2023年4月6日
  • 読了時間: 2分

エピソード6

ドッヂボールでも、同じような具合だった。

オレは、前に出て「攻撃」するのは、やめた。


いつもいつも、後ろに下がった。


相手チームのエースが、

オレのチームの前のほうにいるトロいヤツを狙う。

ボールが上手く避けられて、再び相手チームの外野に届きそうなのを、

オレがダイビングキャッチでもして、掴み取る。

オレはなぜか、手が吸盤になったみたいに、ボールが取れる。

オレは、いつも後ろにいて、

ボールが外野に飛んでいくのを、防ぎ続ける。


つまり、オレは、

ドッヂボールの試合で、サッカーのキーパーをやっていた。

サッカーのキーパーは、パンチングで防いでも評価されるが、

ドッヂボールの場合、キャッチしなければ元も子もない。

オレは、「難易度の高いサッカー」を、ドッヂボールの試合で、行っていた。



オレは、そうしてボールをキャッチしても、

前に出て反撃したりは、しない。

あまりボールを投げたことのない女子に、渡したりする。

その子があまりに嫌がるなら、他の子に渡すか、

または、内野に戻りたがってる外野陣に回す。


オレが誰かにボールをぶつけてヒーローになる必要は、無かった。



この風変わりなドッヂボールも、

かなり、メチャクチャ、面白かった!

とにかく、

「ボールを後ろにそらさないためのアレコレ」が、面白かった!


相手のエースがボールを持てば、

自分のコート全体を見渡して、誰が標的にされそうか、瞬時に判断する。

その子がいる側の後方に、守備位置を取る。


その子が上手くボールを避けたり、ファンブルしたりすれば、

即座にボールに喰らい付く!


本当に運動神経の良い小学生は、

ぜひ、こういうスタイルのドッヂボールを、楽しんでみてほしい!

10人にボールを当てるより、

10回ボールを拾うほうが、ずっと楽しい。えげつないほど楽しい。


『小さな大ちゃん』

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