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エピソード6 『私の彼は有名人』

  • 執筆者の写真: ・
  • 2023年3月26日
  • 読了時間: 2分

エピソード6

私は、名案を思いついた!


この名案を実行するためには、

私は、放送部に入部する必要があった。

私の大学の館内放送は、放送部の生徒たちが仕切っているのだ。

基本的には、お硬い連絡・案内しかしないが、

お昼の時間帯だけは、違う。

FMラジオの番組みたいに、曲を流したりおしゃべりしたり、するのだ。

私は、このお昼の番組を、電波ジャックすることにしたのだ!


…もちろん私は、

電波ジャックなどという大胆な行動ができるような、アクティブな子ではない。

電波ジャックはもとより、マイクの前でしゃべることすら、やったことがない。

これは、私にとって、

一世一代の大チャレンジだったのだ!



入部は、割と簡単に認めてもらえた。

「放送に興味がある」と告げれば、未経験者だろうが内向的性格だろうが、

勘弁してくれたようだった。

放送部の役割は、案内放送がメインになるわけなのだが、

みんなに向かってマイクでしゃべるのは、

とてもじゃないが、私には胃が痛すぎた。

「入部したのにナンなんなんですが、

 このタイミングでノドを痛めてしまって、声を張るのは難しいです」

などと嘘をついて、案内放送はしばらく免除してもらうことに成功した。


それでも私は、放送部の部室にちょくちょく顔を出した。

そして、部員のメンバーと仲良くするよう、頑張った。

すると1週間後、目論見どおりの展開になった!

「トモちゃーん、昼の番組で流したいCDとかって、なぁい?」


私は、恥ずかしくてたまらなかったが、

「最近ファンになったアマチュアミュージシャンがいて、それを掛けてみたい」

という希望を、素直にまっすぐに、みんなに打ち明けた。


「つまみぐいされちゃったんでしょー?」

などという、下品なツッコミが飛んできた。

私は、「そういうのは無いよ。」とニガ笑いで答えた。

「でも、彼と仲良くなりたいなとは、思ってる」と、やはり本音を話した。

「でも、私と仲良くなってもらう以上に、有名になってほしいんだ」と、

例の複雑な心境まで、律儀に、打ち明けた。

私が恋愛相談をするなんて、幼稚園以来かもしれない…


でも、その意気込みは、思った以上の反響を生んだ!

「えー!トモちゃんステキー♪めっちゃ応援したーい!」

と、みんな、口々に言ってくれたのだ!


『私の彼は有名人』

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