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エピソード6 『自由の空へ』

エピソード6

「あ、ああ、ああのぅ。すす、すいまーせん。

 …お姉さん?

 おーい!

 ちょっと?」

「は?私ですか!?」

ホームのベンチで電車待ちしていた私は、

不意に誰かに声をかけられました。

ひどく落ち込んでいたし、焦っていたし、まさか知り合いがいるはずもないので、

自分が呼ばれていると気付くのに、しばらく掛かってしまいました。

「ご、ごめんなさい!無視したわけではなかったんですが…」

申し訳なく思い、反射的に謝って、そして後悔するのでした。

相手は、チャラそうな青年だったのです。

「い、いいよいいよ!気にしないで!

 それよりお姉さん、ひ、ひ、一人なの?

 荷物大きいから…旅行でしょ?この辺、あ、案内しようか?」

どうやら、ナンパです。

私、生まれて初めてナンパというものに遭遇しました。

それにしても、何でしょう?このキョドりっぷり!

「いえ、結構ですので…」

私は、相手の目を見ず、でも丁重に、断りました。

「そう遠慮しないでさぁ。もう夜もお、お、遅いし!

 何しに来たの?そ、それくらいはきき、聞かせてくれてもいいでしょ?」

「知人に会いにきたんです。待ち合わせがありますんで。勘弁してください…」

思わず、目的を答えてしまいました。

私は、あまり気が強いほうではないので、

ナンパをうまくあしらうことが出来ないようです。

「じゃぁ、その人のとこまでお、おお、お送り届けてあげるよ。

 待ち合わせ、どこなの?豊後街道沿い?208号沿い?」

「よくわかりません。この駅じゃありません。別府に行くんです。」

「え?別府?逆方面じゃん!」

「そうです。だから電車を待ってるんです。もう、勘弁してください。」

私は、1区画離れたベンチに逃げていきました。

しかし彼は、まだ追いかけてきます。

「電車、来ないよ。人身事故だもん。で、で、で、電光表示見てないの?

 しゅ、終電までに走るかどうか、わかんないよ?」

「え!?本当ですか!?」

「うん。マジ。と、東京ほど人身事故慣れしてないからさ。手際悪いよー。」

「どうしよう…」

「だ、だだ、だからさ、とりあえず避難したら?

 ファミレスでもいこうよ。リンガーハットあるからさ。」

「結構です。食欲ありません。」


断固突っぱねてはみたものの、どうして良いものかわからない…

私の動揺はますます強くなり、頭もうまく働かなくなってきた。

不安である今、こんな不審なナンパ男であっても、

誰かと喋っているという事実は、私の不安を紛らわす効果があった。

そして私はついつい、彼の質問に律儀に答えてしまうのだ。

「食欲ないならおおおお茶だけでも飲めばいいじゃん?

 一息いれなよー。疲れてんだろからさ。」

 っていうかお姉さん、何しに来たの?その面会者、何者?」

「母の友人です。心理学の人です。私、勉強させてもらうんです。」

私は、目を見ず話します。

「え!心理学!?マジかよこりゃイイぜ!

 要はお姉さん、心理学の大家(たいか)にあ、あ、あ会いたいってコトでしょ?

 んならオレが適任だよ!…って言っても信じないだろうから、

 オレの知り合い、紹介するよ!

 昔スクールカウンセラーやってた先輩がいるんだ。

 近くでライブカフェやってるよ。い、い、い今はカフェのオーナーなの。」

「いい加減にしてください!!」

「おいおい!ジョーダンだと思ってんの?マジの話だよ?」

「マジかはわかりません。でもいい加減にしてください。」

「ふう。

 キミ、ししし心理学を学んでおいてカリカリしてちゃ、世話ないぜ?

 心の平穏を掴むための、しし心理学だろ?」

「え!?」

私は、彼の言葉にはっとしました。

ついに私は、彼の言動に興味を抱きはじめてしまいました。


『自由の空へ』

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