エピソード7 『イエスの子らよ』
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- 2023年3月3日
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部屋にもどって、シスターが帰っていくと、
「ウフフフ。」声がしたわ。
「エルサ、起きてたの?」
「起きちゃったわ。あなたが出ていく物音でね。」
「私がバカだから、笑ってたの?」
「ウフフフ。だいたいみんな、同じことやるわ。」
「そうよね!?」私、安心しちゃった。
「でも、初日に抜け出して大目玉くらったのは、
たぶん、あなたが二人目よ?
前に同じことやったのは、シスター・サラだけらしいわ。」
「その人、問題児なの?」
「とてもおとなしい人に見えるわよ。アタシには。」
エルサと同じで、ネコっかぶりなのかしら。
私、さっき怒鳴られた衝撃が、まだ冷めやらないわ。胸がイガイガしてる。
「大人って、どうしてガミガミ怒るのかしら?
私、怒られるのキライなのよ。」
「それはアレよ。
アタシたち子供っていうのは、ガミガミ怒られないと良い子にしないからよ。
マリアンヌだってそうでしょ?いつもはお行儀よくしてるの?」
「ううん。いつも脱線してばっかり。」
「そうでしょ?それなら怒られたって仕方ないのよ。
どっちもどっちってことね。」
少しおとなしくしてたけど、やっぱり眠れないわ。
「エルサ、起きてる?」
「寝てるわよ。ぐっすり。」
「起きてるのね。
少し、お話付き合ってくれない?」
「しょうがないわね。」
「エルサどうして、修道院に来たの?
ネコかぶってばかりってことは、お行儀よくするの好きじゃないんでしょ?
修道院の生活って、あなたに合ってないと思うんだけど?」
「半分は合ってないけど、半分は合ってるわ。」
「どういうこと?」
「修道院は礼儀にうるさいからアタシに合ってないけど、
修道院は女ばっかりだから、アタシに合ってるわ。
アタシ、男ってキライなの。イジワルだから。」
「ふうん。
でも、そういうあなただって、ナマイキじゃない?」
「そうよ、ナマイキよアタシ。でもイジワルじゃないわ。」
「どっちも同じようなもんじゃない?」
「そんなことないわ!遠くもないけど。
それに、ナマイキっていうのは、あながち悪いことじゃないわ。」
「どうして?」
「ナマイキっていうのは、『年齢のわりに賢い』ってことよ。
何か指摘されたとき、相手が年下だから、『ナマイキ!』って感じるだけでしょ?
同じこと言われても、相手が年上だったら、『するどい!』って褒めるわ。
言った内容には問題ないわけよ。年が幼いのが問題なだけ。」
「ふうん。エルサって面白いのね。」
ナマイキだし変な子だけど、
お母様が教えてくれなかったこと、教えてくれそうだわ。
『イエスの子らよ』