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エピソード7 『人魚たちの償い』

エピソード7

そのとき、奇跡は起きた!

海の底へ沈んでいった人魚の絵は、再び浮かび上がってきたのだ!

いや、浮かんできたのは絵ではない!

本物の人魚だった!!


しかし私は、その人魚が駆けつける前に、意識を失っていた。

その後のことは、何もわからない…











ササーン

ササーン

とても静かな波音を聞きながら、私は目を開けた。

気づいたとき私は、どこかの浜辺に打ち上げられていた。

「助かったのかしら?」一瞬そう思って、でも考えを改めた。

「そんなはずないわね。

 だってあまりに…




 景色が美しすぎるんですもの…!!」

私の目の前には、

透きとおるほどに美しい、ターコイズブルーの海が広がっていた。

薄い薄い、透きとおるほどに薄いターコイズブルーだ。

嵐が嘘のように鎮まりかえった、どこまでも続く遠浅の浜。

穏やかな波の起こす小さな白波が、子猫のように戯れあっていた。

それはまるで、

幼い日の、陽だまりの下の揺りかごのような、

圧倒的なほどの平和と心地よさを誇っていた。

「これは、死後の世界に違いない。」

私は、そう思ったのだ。


感覚が戻ってきたので、私は周囲を見渡した。

父も母も兄も、そばに打ち上げられていた。

私は順番に、3人を起こした。

「良かったわね。家族一緒に死ねれたわ。」私は平和に微笑んだ。

「見てよ。このキレイな景色。」

私の言葉で海を眺めた3人は、

やはり、「この世のものとは思えない」と感じたらしかった。

「死んだ…のか…?」父が、両手を眺めながらつぶいた。

そのとき、アントニーが急に飛び上がった。

「痛てっ!」カニか何かに足を挟まれたらしかった。

「死んでないよ!痛いもん!」

アントニーの言葉に、私と両親は我れにかえった。

「生きてる…の!?」

そのとき、日差しが一気に強くなり、ジリジリと肌を突きさしはじめ、

私も、生の感覚を感じはじめた。


どうやら、生きているらしかった。

生き延びたのだ。あの、絶望的な嵐の海を。



しばらく、海を見ながら沈黙していた。

「人魚だ…!」

不意に、父がぼそっと言った。

「人魚に助けられたんだよ。」

その言葉を聞いて、私も気絶直前のことを思い出した。

「そうだわ…。人魚が泳いできた…。

 お父さんも、人魚を見たの?」

「見たよ。人魚に助けられた。

 息が持たずに、じきに気絶してしまったがね。」

「夢じゃないの?あれって。」アントニーが言った。

「4人とも同じ夢を見たなら、夢じゃないのよ。」母が言った。

夢じゃなかったらしい。幻でも。


『人魚たちの償い』

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