エピソード7
チェンマイ行きの航空券を買ったのは、本当さ。
俺が行きたいのは北部の村なんだから、それで問題無い。
しかし、
1週間というのは、嘘だ。
期日は…
決めてない。
帰りの飛行機は、取ってない。
当然だ。
村に学校建てるなんて、何ヶ月掛かるかわかったもんじゃない。
片道航空券は割高だけど、別に、金には困ってない。
学校を建ててやろうっていうんだから、金はあるんだ。
貯金が、かれこれ500万近くある。
一流企業に勤めてて、実家でぬくぬく甘えてんだ。
TVゲームに毎月1万費やしたって、それくらいはイヤでも貯まる。
よく知らないが、
500万もあれば、木造小屋の1つは建つはずだ。タイの物価は日本の1/10だからな。
学校なんて言っても、3階建ての立派な鉄筋を建てる必要は、無いんだよ。
小中高合わせたって、生徒が20人しか居ないんだから。
とりあえず、
無用な不審感は抱かれたくなかったし、無用な敵は作りたくなかった。
だから、引継ぎ業務は真面目にぬかりなく行った。
頭の中はタイ三昧で、仕事どころじゃなかったが、それでも頑張った。
親とも、いつもどおり接した。
何ヶ月会えなくなるのかわかったもんじゃないが、
名残惜しそうなところを見せるわけにはいかない。
まぁ実際、名残惜しくもなければ寂しくもない。
再就職予定の職場には、丁重に断りを入れた。
「外資からもっと良い待遇を提示してもらえたので…」
なんてハッタリをかましたら、あっさり引き下がってくれた。
携帯電話は、出国当日に解約した。
当然だ。タイでも肌身離さず持っていたら、
8日目に親父から電話が掛かってきてしまう。
面倒なことにならないようにするためには、音信不通の状態を作ったほうが良い。
手紙の一通でも出しておけば、捜索願いを出したりもしないだろう。
友人には、誰にも話さなかった。
そもそも、友人なんてほとんど居ない。
男っていうのは、セックスの話ができないと、仲良くしてくれないのだ。
俺はほとんど童貞みたいなもんだから、セックスの話題には加われない。
風俗なら、2回だけ経験したことがあるが。
友人が居ない奴は、奉仕に生きれば良いんだ。
良い暇つぶしになるぜ。本当に。
『全ての子供に教育を』