エピソード7
「名前の通り?どういうことですか?」
「そのままじゃないですか?
真由。真の自由。
いい名前ですね♪」
「私…自由ですか?初めて言われましたけど…」
「えぇ。僕はそう思います。
人の自由を阻害をしている要素は、大きく分けて2つです。
1つは、恋愛です。
多くの人々は、恋愛のアレコレが足かせとなって、
人生が閉鎖的になってしまうんですよね。
マユさんは違う。
1つの恋愛にこだわらないし、恋愛のカタチにもこだわらない。
恋愛に関して、相手の自由をゆるし、自分の自由をゆるしている。
2つ目は、一般常識です。または固定観念。
多くの人々は、一般常識に囚われて、
月並みな人生しか送れないでいるんですよね。
マユさんは違う。
一般常識に縛られずに、
そして娘さんを一般常識で縛らずに、生きている。
とても自由じゃないですか♪」
マユは安心した。
この面接は、実は、マユ側にとってもある種のテストだった。
交流館の責任者がどのような人間か、娘を託すに相応しいか、
マユもまた、見極めようとしていた。
だからマユは、自分の価値観を必要以上に語ったのだ。
自由に関する話は、マユにはあまりよくわからなかった。
しかし、
この管理人が哲学的人間であることは、よく解った。
そして、一般常識に囚われない人間であることも、よく解った。
マユにとって、哲学は重要だった。
父から刷り込まれた価値観なのだ。
「人間にとって、哲学は重要だ。
何らかの哲学に基づいて生きるべきだ」
父はよくそう言っていた。
マユが宗教に傾倒したのも、そうした理由からだった。
宗教は、ある種の哲学である。
『大家族』