オールドカイロを奥まで進んでいくと、
静かな教会を見つけたよ。
ガイドブックにも載ってないようなトコさ。
サンゴ色の壁に、マリアのモチーフが描かれていたなぁ。
僕は、
キリスト教を信仰するつもりはさっぱりナイけど、
旅先で教会巡りをするのは、割かしスキだよ♪
教会ってさ、
たいていは、タダで入れちゃう。
んで、ステンドグラスをはじめとした内部装飾は、
千年先まで受け継ぐ価値のある、美しいモノが、多い!
しかも、タダで休憩まで出来ちゃうし、
かと言って、
太ったおばちゃんや茶髪のヤンキーが大声で食っちゃべってたりも、しない!
絶好の観光スポットであり、休憩スポットなんだよね♪
この時も、
見つけたその教会に、フラっと入ってみたんだよ。
ビックリしたなー!
内装が、ビックリしたよ!
一体、何があったと思う!?
「何にもナイ」んだ(笑)
その教会には、
イエスの磔刑像も無ければ、絵も、ステンドグラスも、ナイ。
もちろん、
他の聖人像も、絵も、ステンドグラスも、ナイ。
装飾なんて、ぜーんぜんナイ!
何でだろうなぁってぼーっと考えてたら、
その答えはおのずとやてきた。
ちょうどその時、
日曜教会みたいな集まりをやってたところで、
僕は、そーっと、
一番後ろのイスに座って、様子を眺めてた。
10分も休憩したら、外に出たんだけどさ。
そしたら、
インテリっぽい、線の細いおじさんが、
笑顔で話しかけてきたんだよ。
「キリスト教会に、興味をお持ちなんですか?」
とかなんとか、流暢な英語で訊いてくるんだ。
「So so…(そこそこね)」とかって、テキトーに返事したんだよ。
そしたら、
勝手に、教会の説明が始まっちゃってさ!
僕は途中で、丁重に断っちゃったんだけど、
冒頭に彼は、興味深いことを言ったんだよ。
「これは、コプト教の教会で…」
コプト教ってのは、
「原初キリスト教」って言われてる宗派の一つなんだ。
「原初キリスト教」ってのは、
イエスが死んじゃう前から存在してた宗派なんだよ。
「原初キリスト教」は、
イエスを無闇に崇拝したりしないし、
「罪を犯しても、イエス様が肩代わりしてくれます」とかって、
他力本願なことを言ったりは、しないんだよ。
それに、
フツウの教会に見られるような、
煌びやかな装飾や、痛々しいイエスの像や、神々しい聖人たちの絵を飾ったりして、
信者や旅行者を寄せ集めたりは、しないんだ。
教義的には、仏教や古神道のそれに、近いだろうなぁ。
…つまり、
コプト教信者の彼らにとって、教会ってのは、
「他人に助けてもらいに行く場所」ではなくて、
「自分で自分を見つめなおし、高めに行く場所」なんだよ♪
そういう作業は、「内観」なんて呼ばれてるかな。
「内観」の価値に気付いてる宗教人は、
かなりレベルが高いと言えるよ。
僕は、宗教信仰者とはあまり気が合わないけれど、
「内観」系の自立的な人たちなら、割とウマが合うね♪
『導かれし者たち』