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エピソード8

オールドカイロを奥まで進んでいくと、

静かな教会を見つけたよ。

ガイドブックにも載ってないようなトコさ。

サンゴ色の壁に、マリアのモチーフが描かれていたなぁ。


僕は、

キリスト教を信仰するつもりはさっぱりナイけど、

旅先で教会巡りをするのは、割かしスキだよ♪

教会ってさ、

たいていは、タダで入れちゃう。

んで、ステンドグラスをはじめとした内部装飾は、

千年先まで受け継ぐ価値のある、美しいモノが、多い!

しかも、タダで休憩まで出来ちゃうし、

かと言って、

太ったおばちゃんや茶髪のヤンキーが大声で食っちゃべってたりも、しない!

絶好の観光スポットであり、休憩スポットなんだよね♪



この時も、

見つけたその教会に、フラっと入ってみたんだよ。


ビックリしたなー!

内装が、ビックリしたよ!


一体、何があったと思う!?


「何にもナイ」んだ(笑)



その教会には、

イエスの磔刑像も無ければ、絵も、ステンドグラスも、ナイ。

もちろん、

他の聖人像も、絵も、ステンドグラスも、ナイ。

装飾なんて、ぜーんぜんナイ!

何でだろうなぁってぼーっと考えてたら、

その答えはおのずとやてきた。

ちょうどその時、

日曜教会みたいな集まりをやってたところで、

僕は、そーっと、

一番後ろのイスに座って、様子を眺めてた。

10分も休憩したら、外に出たんだけどさ。

そしたら、

インテリっぽい、線の細いおじさんが、

笑顔で話しかけてきたんだよ。

「キリスト教会に、興味をお持ちなんですか?」

とかなんとか、流暢な英語で訊いてくるんだ。

「So so…(そこそこね)」とかって、テキトーに返事したんだよ。

そしたら、

勝手に、教会の説明が始まっちゃってさ!

僕は途中で、丁重に断っちゃったんだけど、

冒頭に彼は、興味深いことを言ったんだよ。

「これは、コプト教の教会で…」



コプト教ってのは、

「原初キリスト教」って言われてる宗派の一つなんだ。

「原初キリスト教」ってのは、

イエスが死んじゃう前から存在してた宗派なんだよ。

「原初キリスト教」は、

イエスを無闇に崇拝したりしないし、

「罪を犯しても、イエス様が肩代わりしてくれます」とかって、

他力本願なことを言ったりは、しないんだよ。

それに、

フツウの教会に見られるような、

煌びやかな装飾や、痛々しいイエスの像や、神々しい聖人たちの絵を飾ったりして、

信者や旅行者を寄せ集めたりは、しないんだ。


教義的には、仏教や古神道のそれに、近いだろうなぁ。

…つまり、

コプト教信者の彼らにとって、教会ってのは、

「他人に助けてもらいに行く場所」ではなくて、

「自分で自分を見つめなおし、高めに行く場所」なんだよ♪

そういう作業は、「内観」なんて呼ばれてるかな。


「内観」の価値に気付いてる宗教人は、

かなりレベルが高いと言えるよ。

僕は、宗教信仰者とはあまり気が合わないけれど、

「内観」系の自立的な人たちなら、割とウマが合うね♪



『導かれし者たち』

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