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エピソード8 『イエスの子らよ』

  • 執筆者の写真: ・
  • 2023年3月3日
  • 読了時間: 2分

エピソード8


朝は6時に起床なの。

シスターか誰かが、部屋のドアをコンコンたたくのよ。

私はそれじゃ起きれなかったけど、

エルサが起きて、私のことも起こしてくれたわ。


7時に食堂に行くと、

昨日とは打って変わって、人が大勢いたわ。

みんなで一緒に朝食をとるの。修道院ってそうなのよ。

食前のお祈りをしたら、あとはもう、ぜんぜんしゃべらないの。

みんなだまーって食事するのよ。

子供たちはときどきしゃべるけどね。それでも静かなもんだわ。

私は、ふと思い出した。

「ねぇ?サラってどの人なの?」私はひそひそ声でエルサに聞いた。

「サラ?えーっと…

 ほら、あのヒマワリの絵のとこの人よ。

 チョコレート色の髪の人。」

とても美人な人だったわ。仕草もとてもお上品で、ぜんぜん私に似てない。

となりの人のフルーツをつまみ食いするような人かと、思ったのに。


朝食を終えると、ばらばらに散っていったわ。

それぞれにやることが違うのよ。

「今日は日曜日だけど、礼拝はしないの?」私はエルサに尋ねた。

「礼拝しないのよ。何曜日も。

 この修道院は、聖書のお勉強よりも『生活』が大事なんですって。

 ひとつひとつのことを丁寧にやるの。

 それと、いろんなことをやるの。服のボタンが取れたら、自分で縫うのよ?」

「私、そんなのできないわ。」

「アタシが教えてあげるから、大丈夫よ。」

「エルサ、お裁縫得意なの?」

「だから、ここで習ったんだってば。相部屋の先輩に、ね。」

「ふうん。そうしてバトンタッチしていくのね。」

その日の午前中は、その裁縫のお勉強だったわ。

私は針の糸すら満足に通せなかったけど、

エルサは器用に、イスの座面を張り替えていたわ。



『イエスの子らよ』

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