エピソード8 『全ての子供に教育を』
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- 2023年3月14日
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エピソード8
親父に嘘をついた日から丸1ヶ月後、
俺は、日本を発った。
飛行機なんてずいぶん久しぶりだ。18の修学旅行以来か。
飛行機の中では、色んなことを考えた。
「このまま、日本に帰らないっていうのはどうだろう?」
それも悪くない気がする。
学校建てるのに財産の半分を使うとして、
残り250万もあれば、5年くらいしのげるんじゃなかろうか。発展途上国ならば。
その後はどうする?
現地のIT企業にでも就職するか。
いや、就労ビザとかなんとか、手続きに躓くだろう。
それにもう、
棺桶みたいなビルの中で仕事したいとは、思えなくなってしまった。
いったん離れると、急に、そういうふうに感じられる。
僧院でも訪ねてみるか。
出家僧たちが暮らしている修道院みたいなのが、幾つもあるらしい。
金を払わなくても、滞在させてくれるらしい。
僧院なんて場所は、
セックスはおろか、女と手すら繋げないのだろうが、
それは今でも同じことだ。
そのまま親と絶縁して、僧院に出家したら、
俺も仏陀になれるのだろうか?
いや、そうは思えない。
出家僧=仏陀では、ないのだ。
チャラい出家僧も大勢いる事実を、俺は知っている。
昔チェンマイで目撃し、
子供ながらにドン引きしたのを、今でも鮮明に覚えている。
…そもそも俺は、仏陀になりたいのか?
どうだろう。よくわからん。
仏陀になって何の意味があるんだ?誰かに自慢するのか?
「仏陀の居る寺」なんてのを構えて、
信者をがっぽり集めて、お布施をがっぽり集めるのか?
…いや、
金銭欲や名声欲が残っているうちは、そもそも、仏陀にはなれないはずだ。
どうやら俺は、
「今の暮らしにうんざりしている」というだけであって、
特にこれといって、何かを求めているわけではないらしい。
『全ての子供に教育を』