top of page

エピソード8 『私の彼は有名人』

エピソード8

路上ライブで、彼にそれを見せると、とても喜んでくれた。

良かった…

「余計なマネするな」って怒られないか、内心ドキドキだったのだ。

怒ったりするような人ではないけれど、

だからこそ、困らせたくはない。


彼は、ギターケースの横にそのフライヤーの束を置き、

チューナーを重しがわりにして、風で飛ぶのを食い止めていた。

ときどき、通りすがりの人たちが、

そのチラシを手に取り、眺め、そして、持ち帰っていった。

しかし、ごく2~3人程度のものだ…。


それを眺めていた私は、ハっと思い出した。

ライブハウスで、お客さん一人ひとりにアンケート用紙を手渡しするミュージシャンを。

あれは確実に、紙を手にとってもらいやすいし、印象に残りやすい。

であれば、このフライヤーだって、

ただ地面に置いておくだけでは、もったいないではないか。


私は、そのフライヤーの束を再び取り上げると、

彼の前に、彼と同じ向きで、立った。

今までは、彼とは常に、向き合う立ち位置であったけれど、

今初めて、彼と同じ向きで立つ格好になった。

フシギなもので、連帯感・一体感のようなものが芽生えてきた!

「彼のCDが売れるか否かは、私にかかっている!」

勝手に、そんな気がしてきた。


次の瞬間、私は、声を張り上げていた。

「よろしくお願いしまーす!CDも売ってますよー!」

半ば体が勝手に動いていた。口が勝手に動いていた。


私は、自分にビックリした!

これまで私は、駅前でこんなふうにビラ配りする人たちを、

半ば、軽蔑していたのだった。

軽蔑まではいかないにしても、「自分には絶対ムリ」と思っていたのだ。


…それを今、私がやっている。

誰に強制されるでもなく、自分から…!


「よろしくお願いしまーす!CD、残りが5枚を切りましたー!」

「よろしくお願いしまーす!○○大学でパワープレイされたミュージシャンでーす!」


自分でもビックリするくらい、色んな宣伝文句が浮かんできた。

アドリブが大の苦手な私だったのに…!?


人のために何かをしようとすると、

こんなにもパワーが湧いてくるものなのか。

こんなにもアイデアが湧いてくるものなのか。


『私の彼は有名人』

最新記事

すべて表示

エピソード158『世界樹 -妖精さんを仲間にするには?-』

エピソード158 ドラゴンの姿のキキは世界樹の残骸の上にふわりと降り立った。 3人と馬をそっと地面に降ろす。 そしてすぐに10歳の少女の姿に戻った。 キ「ふぅ!みんなお疲れさん♪」 な「キキちゃぁーーーん!怖かったよぉぉ!!」 ななはキキに飛びついた。 キ「よしよし。よくやったねぇ」キキはななを優しく抱きしめ労った。 ゆ「キキちゃん強すぎ!」ゆなもキキを抱きしめる。 キ「へっへーん♪ だから言った

エピソード157『世界樹 -妖精さんを仲間にするには?-』

エピソード157 キキはジロっとエビルプリーストを睨みつけた。 キ「最後はみんなで戦いたいの。協力してくれる?」 3人は力強くうなずく。 キキの背後には、さっきの天使たちが光の粒の姿となってキラキラと輝いた。 キキは両手を構えて魔力を集中させる。 キ「山よ、海よ、花よ、宇宙の無数の精霊たち。そして新たな天使の友人たち。 精霊ルビスの御名の元、今こそ我に力を与(くみ)し賜え。 ただただ不届きものを滅

Kommentare


bottom of page