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エピソード8 『首長の村の掟 -真実の物語-』

僕は、ヤスさんたちと、

夜7時に、スアク門の前で待ち合わせをした。

スアク門というのは、僕はよく知らなかったけれど、

行けばなんとかなるだろうと、思った。


しかし、

7時のスアク門前は、ものすごい雑踏だった!

小さなナイトマーケットが立ち並んでいたので、そのせいかとも思ったけれど、

それにしても、人の数が多過ぎる…


ヤスさんを探しがてら、門の周りを徘徊していると、

何やら、門前の広場に、人の輪が出来始めた。

みんなで協力して、一つの輪を作っている。

専ら、タイ人であるようだ。


彼らは、それぞれに外側を向き、

手には、

何やら文字の書かれた、A2サイズくらいの、大きな画用紙を掲げている。

または、裏に木の棒を貼り付けて、立て札状にしていた。

英語のものとタイ語のものと、両方があったが、

英語の表記を見る限り、

「WAR IS OVER」などと、反戦的な標語が書かれているようだった。


「反戦デモかぁ。」

僕は、空に呟いた。



僕は、

反戦デモというものが、基本的には、好きではない。

彼らは、他人の戦争に文句を言いながら、

そのクセ自分たちも、

攻撃的な顔をして、他人の迷惑も顧みずに、暴動を起こす。

…矛盾この上ない(笑)


僕は、

腐敗した体制に立ち向かったり、刷新したりする人間が、大好きだ。

自分も、学生時代に、ずいぶんとやった。

けれども、

体制に立ち向かうために、声を荒げる必要は、ない。

拳を握る必要も、ない。

相手が武装していようとも、それらは、必要ない。

「無血革命」というのは、必ず、可能なのだ。


あなたがもし、

「カルマの法則」というものを理解するなら、

絶対に、拳を握ったりは、しないだろう。

他人を殴り倒して手に入れた場所は、必ず、誰かに殴られて奪われる。

歴史の教科書を10ページでも読めば、

その不毛な法則に、気付けるはずなのだけど…



僕は、チェンマイで突如遭遇したこのデモを、

静かに、ぼーっと、眺めていた。


輪が出来ると、

誰か、代表者のような人が、

ハンドスピーカーを片手に、しばしの演説をした。

タイ語だったようで、何を言っているのか、見当が付かなかった。

しかし、1つだけ確かなことは、

その人は、声を荒げるようなことは、微塵もしなかった!

何か、手順の説明をしたようだった。


演説が済むと、

輪を作る人たちは、それぞれに、手を繋いだ。

彼らは、何も叫ばない。



…そういえば、1週間くらい前に、

「タイ南部でテロが起きた」というニュースを見た。

確か、アメリカとタイが敵対するような話だったと思う。

あのテロを受けての、反戦デモだったと思われる。


輪を作って手を繋ぐ人たちは、みんな、穏やかな顔をしていた。

「みんなも輪に加わってー!」

などと、呼びかけたりも、しない。

それをやれば、彼らは、くたびれるだろう。

そして、多くの聴衆に、反感を買うだろう。


彼らは、ただただ、

手を繋いで輪を保っていた。

誰も叫ばず、誰も怖い顔などせず、誰も悲しい顔をしない。



やがて、

スタッフの1人が、彼らにキャンドルを配り始めた。

そして、もう1人のスタッフが、そのキャンドルに火を灯していった。

スタッフの届かない人たちは、キャンドルを傾けて、自分たちで火を灯し合った。

あっという間に、キャンドルの輪が出来上がった。


幻想的な風景だった…!!


通り掛かりの聴衆たちは、「デモを見ている」のではなく、

「美しく、平和なショーを見ている」に、過ぎなかった。

デモを眺めながら、こんなに喜びに満ちた表情をする人々など、

僕は、見たことが無い!!



1人、また1人、

欧米人たちが、目を輝かせて、その輪に加わっていった。

恐らく、アメリカ人も居たことだろうと思う。

キャンドルを貰いに行き、

火を、見知らぬタイ人から受け取り、

幻想的な風景の一部に、溶け込んでいった。

様々な人種の人々が、一つの風景に溶け込んでいった…!



少なくとも、この地球上で、

彼らだけは、平和だった。人類愛の懐の中で、完全に守られていた。

神が守るわけじゃない。

軍隊が守るわけじゃない。

互いが互いを、守っていた。

違う人種が違う人種を、守っていた。

彼らは、

平和を獲得するために、誰かを打ち負かしたりは、していない。

ただ、自分自身が、「平和な佇まい」を選択しただけだ。

他人を、他の人種を、愛しただけだ。手を繋いだだけだ。

他人がどうであるかは、関係無かった。



あなたのパートナーが、「テロを起こしたアメリカ人」で、

あなたが、「被害を受けたタイ人」であると仮定したら…

あなたは、このタイ人たちのような振る舞いが、選択出来るだろうか?

他のデモ集団のように、

復讐に怒り狂って、益々傷口を広げたりは、していないだろうか?



…少しの時間、

読むのを止めて、思い返してみてほしい。

平和の達成というのは、

まず、家庭や職場、恋愛から、始まるのだ。


「怒りもせず、嘆きもせず、ただただ、愛する」

というリアクションは、

とてもシンプルでありながら、とても難しい。


もし相手や周囲が、

あなたの灯した愛のキャンドルに、彼らの心のキャンドルを傾けてくれないのなら、

そんな彼らとは、離れて暮らしたほうが良い。

彼らと平和を形成するのは、不可能だから。

平和確立のために、離れて暮らすのだよ。

互いの自由を尊重するために、離れて暮らすのだよ。


あなたが平和を願うなら、

地球の平和のみならず、家庭や職場の平和を願うなら、

この「住み分け」という概念も、理解しておいたほうが良い。


『首長の村の掟 -真実の物語-』

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