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エピソード8 キャロルの誕生日

エピソード8 キャロルの誕生日


ミシェルはアンジェリカに道案内してもらい、バス通りまで出てこれた。

お金を持っていなかったミシェルは、バスの運転手に、

「交番まで乗せてください」と告げた。

迷子を察した運転手の計らいで、ミシェルは無事、帰宅することができた。

家族はもちろん、イスがひっくり返るほどおどろいた。

「なんだミシェル、お前、魔女にでもさらわれたのかと思ったぞ!」サイラスが言うと、

「そうよ♪ママと同じくらいの年の人だったわ。

 でも魔女さんの名前はヒミツなの。それが約束なのよ。」

とミシェルはほほえんだ。



キャロルの誕生日が近づいてきた。

ミシェルたちは、家族で誕生日を祝うのが習慣であったが、

その年のキャロルの誕生日は、

サイラスは会社の出張で、ロイスと一緒に出掛けなければならなかった。

ミシェルは、さみしがるキャロルのために、一策講じることにした。

「ねぇナンシー、協力してほしいの!」

「なぁに?」

学校から秘密基地へと向かいながら、二人は話した。

「来週のキャロルのお誕生日、

 一緒にお祝いしてほしいのよ。パパもママもいないから。」

「いいけど、私お金持ってないわよ?」

「プレゼントはいらないわ。あの子、何でも持ってるから。」

「それじゃどうやって祝うの?」

「ピクニックでもしましょうよ。市民公園でいいわ。

 私プディングを作ってくるから、

 ナンシー、サンドイッチを作ってきてよ。得意でしょ?」

「いいけど…」

「あ、オリーブは入れないでね!私あれ、嫌いだから!」



誕生日の当日、

予定どおり、両親は朝から出かけることとなった。

ミシェルは、ふてくされるキャロルを抱きしめなだめながら、両親を見送った。

ピンポーン!

息つく間もなく、インターホンが鳴った。

「あら?パパったら、また忘れ物かしら?

 キャロル、カギを開けてあげて。」

ふくれっつらでカギを開けたキャロルの前に現れたのは、

両親ではなく、ナンシーであった。

「キャロル!お誕生日おめでとう♪」

「わぁ!ナンシー!!」

家族以外の人間に祝ってもらうのが初めてであったキャロルは、

両親へのうらみなどどこ吹く風に消し飛んで、笑顔を取りもどした。

「ピクニックにいきましょう♪

 ほら、汚れてもいい服に着替えて!ロッドもよ?」


着替えをすませたキャロルたちは、

ロケットみたいに勢いよく、家を飛び出した。

「あらミシェル?あなたスカートはいてきたの!?」

「そうよ。今日は思いっきり走り回ると思ったから。」

「へ??普通、走る日はスカートははかないでしょ?」

「うふふ。それは大人の考えよ!

 スカートのすそがどうしてヒラヒラしてるか、知らないの?

 走ったときにきれいになびくからよ♪」


一行は川を越え、市民公園へと向かった。

よく晴れた休日で、憩(いこ)う市民で朝からにぎやかであった。

秘密基地のウィリアムスたちにあいさつをして、チョコとアメ玉をもらい、

シロツメクサのしげる広場にレジャーシートを広げた。

「お姉ちゃん、わたし、お腹すいたー。」キャロルはミシェルの服を引っ張る。

「え、もう!?」ナンシーは目を真ん丸くしておどろいた。

「あははは。そういえば私たち、まだ朝ごはん食べてなかったわ。」

「もー!頼むわよぉ。

 私なんて朝5時に起きて、サンドイッチ作ったのよぉ!」

「ナンシーのサンドイッチぃ!」それはキャロルも好物なのだ。

「はい、どうぞ。お誕生日おめでとさん。」

ナンシーはバスケットをまさぐり、

サンドイッチの入った弁当箱を、両手でキャロルに差し出した。

しかし…

「きゃはははは!何これぇ!!」

フタを開けたキャロルは、腹をかかえて笑いだす。

「え?そんなおかしなサンドイッチ、作ってないわよ!?」

ナンシーが弁当箱をのぞきこむと、

そこには、ぐじゃぐじゃに散らばったサンドイッチ。

弁当箱を取り上げて、してやったりにミシェルは言った。

「きゃはははははは!

 キャロル?これはね、シェフの腕が悪いんじゃないのよ?

 バスケット振り回しちゃったから、台風みたいになっちゃったの!

 きゃははははは!」

「もぉー!だからいつも以上に全力で走ったりしたのねー!?」

「きゃははははは!!」キャロルは涙目になって笑っている。

「いいじゃない?

 パパやママや大人たちじゃ、ぜったいこんなプレゼントできないもの♪

 ナンシーあなた、中等部に入ったって大人になっちゃダメだからね?」

「ふぅ。あんたには勝てないわ。」


一行は、サンドイッチとプディングをたいらげると、のんびりと遊んだ。

歌い、

踊り、

走り、

笑い、

シロツメクサをあんだ。


太陽が真上に差しかかる頃、キャロルが言った。

「お姉ちゃん。わたし、またお腹へったぁ。」

「えー!あ、そういえば、

 サンドイッチはお昼ご飯のつもりだったのに、朝っぱらに食べちゃったんだわ!

 どうしよう?

 ウィリアムスさんにもらったアメ、なめる?」

「じゃじゃーん!

 こんなこともあろうかと…」

ナンシーは得意満面に、バスケットから包みを取り出す。

ふっくらとしたクッキーが、バターの香りをただよわせている。

「スコーンだわ!

 ナンシー、あなたって最高♪」

スコーンは、ミシェルの大好物であった。

「いっただっきまぁーす!」

キャロルよりも先に、ミシェルはスコーンにかぶりついた。

しかし…

「うぇぇぇ!!なにこれぇ!!」

喜びも最高潮(さいこうちょう)というところなのに、

なぜかミシェルは顔をにがませた。スコーンらしからぬ味がする。

「ひょっとして…コレ…!?」

「そうよ!オリーブの実よ!

 きゃははははははは!!」

「きゃはははははははは!!

 やっぱりナンシー姉さんにはかなわないわっ!!」

「きゃはははははははは!!」

無数のシロツメクサたちも、風に吹かれながら笑っていた。

傑作(けっさく)のシナリオに感動し、本当に、笑っていた。



『ミシェル』

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