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エピソード9 『ヒミツの図書館お姉さん♪』

レノンさんは、身を乗り出して、小声になった。

「古藤さんな?

 これから、土日に、

 図書館に『お手伝い』をしに来ては、くれんか?」

「おてつだい!?」

「そうじゃ?『お手伝い』じゃ!

 『司書』ではないぞ?『司書補』でもない。

 『清掃スタッフ』ですら、ない…。

 完全なボランティアじゃから、お給料も出ん。

 まぁ、お茶菓子くらいはあり付けるかもしれんし、

 本は読みたい放題じゃが、どうかな?」

「やる!やる!やります!

 やらせてほしいです!

 そっかぁ、納得!

 1年もボランティアをやらせてもらえたら、

 私の司書熱も、冷めるかもしれないですよね♪」

「はーはっはっはっは!!

 何を言うとるんじゃ!?

 逆じゃよ♪

 一年では足りんかもしれんが…

 ボランティア・スタッフの果てには、

 それなりにお給料をもらいながら、

 司書同然の仕事が、出来るようになるハズじゃ♪」

「えー!?

 どういうことー!?」

「これはな?

 司書の業界に限らんことじゃが…

 どうしても働きたい業界があるんじゃったら、

 ボランティアでも何でも、自腹を切る覚悟さえも持って、

 その業界にもぐり込んでしまうことじゃよ♪

 そこで、

 便所掃除から、お茶汲み・コピーから、

 何から何まで、業務の手伝いをするんじゃ。

 するとな?

 1年もすると、

 社員同然の業務を、任されるようになっとる(笑)

 そのような人材は、その業界としては、宝物じゃよ!

 東大の新卒者よりも、エリート銀行員からの転職者よりも、

 ずーーーーーーーーーーーーーっと信頼出来るし、戦力になる!

 すると、

 定年の頃のワシと、同じようなことが起こる!

 つまり、

 行政関係者にイチャモンを付けられんようなカタチで、

 どうにかソイツを雇うような『抜け道』を、画策するじゃろうなぁ♪」

「私も、図書館で働けるってことー!?」

「そういうことじゃ♪

 …ただし、

 給料は、他の職員の半分かもしれんぞ?

 ワシも今、8時間の週5日で、12万ほどの薄給で働いとる。

 …まぁ、古藤さんはシルバー人材ではないから、

 それよりは良い給料が出るじゃろうが、

 一人暮らしする余裕は、あるかどうか…

 それでも、

 ボランティアで何百時間も働くことが、出来るかな?」

「うー。

 一人暮らしは、人生のどこかで経験しておきたかったけど…

 でも、お給料には、こだわりはないんです!」

「良い返事じゃな♪

 それと、もう一点ある。

 おぬしが1年以上もボランティアを続けたとしても、

 その努力が100%報われる保証は、ない。

 どこにも、ないんじゃ。

 たとえワシが、ここの最高責任者であったとしても、

 100%の保証をしてやることは、出来ん。

 もしかしたら、

 古藤さんよりもその役立たずの東大の新卒者のほうを、

 採用せねばならん事情が、出てくるやも、わからん…

 『何の保証もない闇の中』に、

 飛び込む勇気と根性は、おありかな?

 …そのような冒険をする少女の文学も、たくさんあるがのう…?」

「うー。どうしよう…」

私は、ある程度の困難に飛び込んでいく覚悟は、

持っているつもりだった。

けれど、

いざ目の前で、具体的に岐路に立たされると、

混乱し、動揺している自分が、居た…


「あの、レノンさん。

 私、数日くらい、考えさせてもらっても良いですか?」

「ほーほっほっほ!

 もちろんじゃとも♪ゆっくり、考えなされ?」



『ヒミツの図書館お姉さん♪』

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