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エピソード9 『マイウェイ -迷路の町のカロリーナ-』

1台ならまだしも、3台も注文が入っちゃったわ。

さすがにパパ一人じゃどうにもならなくなって、人を雇うことになったわ。

つい昨日まで無職だったのに、いきなり雇い主よ。どうなってんの?

そうして半年も経つと、

セントニール島の西海岸には、青と白のキレイな船が、幾つもただようようになったわ。

それを丘の上から眺めると、あんがい絶景なのよ。美しいわ。


ある日私、お遣いを頼まれて、

珍しく、島の外まででかけていったの。

その帰りのことなんだけど、

私、久しぶりに迷子になっちゃったわ!

なぜって?船着場から、青い丸屋根を目印に歩いたら、

ぜんぜん知らない人の家にたどり着いちゃったの!

私が居ない間に、パパたち引っ越しちゃったのかと焦ったわ!

でもそうじゃないの。よく見ると、ウチじゃない。

意味わかる?我が家のマネして、丸屋根を青く塗る家が現れたのよ。

それも、1軒だけじゃないの。

マネする人が1軒現れたとたんに、何十軒も、一気に増えたわ!

屋根を青く塗るだけなら、カンタンだからね。日曜大工ニガテでも、できちゃう。

パパ別に、マネされても怒ったりしなかったけど、

迷子の目印がなくなっちゃったわ。まぁ、その頃には迷わなくなってきたけど。


…そうして…

私たちが引っ越してきて、1年経った頃には、

家はどこもかしこも青白だし、船はどれもこれも青白なの。

みーんなパパと同じ!みーんなキレイ!

それで、どうなったとおもう?

セントニール島ったら、観光地になっちゃったの!

青白の家並みと青白の帆船をお目当てに、

観光客がどっと押し寄せるようになっちゃったの!


ヴェネチカの町と同じことが起きたわ。

観光客を目当てに商売する人が出てきて、

海鮮パスタの店が3軒できて、次に海鮮パスタの店が3軒できて、

おまけに海鮮パスタの店が3軒できたわ。

お土産屋がたくさん出来たし、

観光客をクルージングするために、青白の帆船が走りはじめた。

クツ屋さんと古本屋さんが潰れて、教会でカードを売るようになったわ。

そして、迷路の路地を、白い浜辺を、無数の人が行き交うようになっちゃった。

町は汚れ、浜は汚れ、人の心も汚れてしまったわ。

ヴェネチカの町と同じ。何から何まで同じよ。

パパに感謝する人が大勢現れて、パパを憎む人も大勢現れたわ。

それもこれも、パパが青く塗りはじめたからですもの。

パパって、疫病神なの?福の神なの?


観光客はどんどん増えたわ。

「地中海一の楽園!」なんて言われるようにもなったけど、

それは違うのよ。

この島が楽園だったのは、観光客が押し寄せる前の日までのこと。

あの頃は、たしかに楽園だったわ。地中海で1番かもしれない。

でも今は違う。

クツ屋も古本屋も無いのに、楽園なわけないじゃない。

コーヒーが300リラもするなんて、楽園なわけないじゃない。



『マイウェイ -迷路の町のカロリーナ-』

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