エピソード9 『沈黙のレジスタンス』
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- 2023年3月7日
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僕は、話を変えた。本題に入った。
「でも、
家出のためのアジトは?
岩掘って暮らし続けるための対策は?
どうなったのさ?」
「………。」
「やめちゃったの?それすら。」
「家出のアジトは、必要なくなっちまったんだよ。
オレが12になったとき、背がぐんぐん伸びた。今や親父よりも背が高いぜ。
すると、親父はオレに、あまり口出ししなくなってきたんだ。
ケンカしても敵わねぇと、思うようになったんだろう。
だからオレに、家出のアジトは必要ないんだよ。」
「そっか…。」
「でもな?
チャゴスがオレを頼ってくるようになって、
オレはまた、感じるものがあった。
オレにアジトが必要ないにしても、
アジトを必要とするヤツは、居るだろうってな。今のチャゴスみたいにさ。
殴るヤツが居続けるうちは、隠れる家が必要なんだよ。
けどよ、
オレだって、嫌われ者で厄介者だろ?
オレがかくまっていると、なおさらそいつが迫害されかねない。」
「たしかに…」
「オレは、考えた。
オレ以外の人間のために、家出のアジトをこさえるにはどうしたらいいか。
自分のためじゃなく、他人のために、考えた。
そしたらな?浮かんできたんだよ。アイデアが!」
「どんな!?」
「へへ。
今日はもう暗いからな。
明日また昼過ぎに、ここに来いよ。見せてやる。」
『沈黙のレジスタンス』