エピローグ 『全ての子供に教育を』
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- 2023年3月14日
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エピローグ
結局俺は、
日本には戻らなかった。…少なくとも今はまだ、戻っていない。
チェンマイも俺には騒がしすぎるので、場所を変えることにした。
チェンライという町に来ている。名前がよく似ていて、紛らわしいが。
韓国人オーナーの経営する、韓国人旅行者ばかりの安宿で、
彼らに同化しながら暮らしている。
チェンライに来てようやく、
ハックが話し掛けてきた。
まさかお忘れではないだろうが、俺の守護天使なる、ハックである。
「お前、今までどこで何してたんだよ?」
「プププ。ずーっと肩の上にいたけどぉ?」
「なんで、一言も喋らなかった?」
「だって、ボクと喋ってるところを誰かに見られたら、
いろいろと面倒でしょ?キチガイと思われるかもしれないし。」
一理ある。
「でも、お前がもっと積極的にアドバイスをくれてたなら、
俺の学校プロジェクトは、もっと有意義な結果になったかもしれないんだぞ?」
「有意義な結果になる必要、あったかなぁ?
利典さんに言ってなかった?『そういう問題じゃないです』って。
あれは立派だったと思うけどぉ。」
「立派?どういうことだ?」
「高志、奉仕がしたくてはるばるタイまでやってきたんでしょ?
本当に奉仕をしたいなら、結果にはこだわらないほうが良いよ。
死力を尽くした結果、それが報われなかったとしても、
憎んだり悲しんだりは、しないことさ。」
「なんで!?普通、そんなの無理だろう!?」
「うん。無理な人が多いけどさ。
でも、
奉仕活動って、本当は、『プロセス』が重要なんだよ。
自分を犠牲にしてでも誰かを助けようとする、その心持ちが重要なの。
どれだけ自己犠牲に徹せられるか、それを試すだけのものなんだよ。
だから、結果なんていうのはどうでも良いし、こだわらないほうが良いよ。」
「………。」
あまり腑に落ちないが、その通りなのかもしれない。
あとがき
この物語は、フィクションです。
タイ北部には、ノラ族という民族もロレン族という民族も、存在しません。
しかし、この物語のベースとなった集落は、実際に存在します。
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2014/03/14 完筆
『全ての子供に教育を』