プロローグ 『星空のハンモック』
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- 2023年3月19日
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プロローグ
地元・熊本を襲った大地震。
避難所に行かず、県外に逃れてきたことから、人生が大きく変わったハナ。
運命と縁に誘(いざな)われながら西日本を転々とし、
ウェブライターとしてのスキルを養いながら、沖縄の東海岸へとたどり着く。
ガイドブックも観光雑誌も見なかったことが功を奏し、
ハナは麗しき麗子さんと麗しきプチ・ペンションに出会う。
これは、ハナが麗子さんのプチ・ペンションで過ごしはじめてからの、ストーリー。
エピソード1
「おかーさーん!
いこー!はやくー!」
リナちゃんが庭先で、麗子さんを呼んでいる。
「え?もうそんな時間?」
キッチンで料理の仕込みをしていた麗子さんは、大慌て。
「え?どこ行くんですか?」私は尋ねる。
「ウフフ。病院♪リナのね。」
「病院?病院にワクワクしてる子供なんて、私初めて見ました。」
「だって、ステキな病院なんだもの♪
ハナちゃんも行きましょうよ。ライターのお仕事、締め切り近いの?」
「いえ、そんなことないですけど。」
「じゃぁ決定!行きましょう♪」
「???」
わけもわからず、でも私はついていく。
朝も10時を回れば、冬の沖縄もそれなりに暖かい。
麗子さんとリナちゃんは、おそろいの白いワンピースを着て、
おそろいのようなくりくりの笑顔で、手をつないでスキップしている。
どうも見ても、病院に行く様子には見えない…
けれど、庭も通り過ぎて車に乗る気配は無い。
あれ?そんな近くに病院なんてあったかな?
まぁいいか。どこでもいい。
「麗子さん、そのワンピ、ひょっとして手作り?」
「あ、わかった?そうなの。ウフフ。福岡にいたころだけどね。
沖縄だと年中半そでのワンピ着れるから、大活躍でうれしいわ。」
すごいな。麗子さんは裁縫までこなすのか。
集落からバス通りに出て、さらに突っ切って小さな路地をいく。
「この先に何があるんですか?海しかなさそうだけど…」
「そうよ。海に行くんだもの。」
「海!?」
「海が、リナにとっては病院なの。そして名医のお医者さん。ねー?」
「うーん♪」
やがて私たちは、百名ビーチというビーチにたどりつく。
沖縄に来てはじめての海だ。
本州ではなかなか見られない、明るい鮮やかな青い海。
百名の海はそんなにキレイなほうではないらしいけれど、
私にとっては、これでも充分キレイ。
浜も白くて、その白と青のコントラストがまた美しい。
何よりいいのが、人がぜんぜん居ないことだ。静か好きの私にはうってつけ。
「リナー、あんまり遠くまで行っちゃだめよー!」
「うーん!わかってるー!」
リナちゃんは、浜に着くとますます駆け足になって、もう波打ち際まで到達している。
とても幸せな、海辺の町の風景。
『星空のハンモック』