15 働かないで仕事する
僕はまさか、自分がおちんちんと会話する日が来るなんて、思ってもみなかった!!!
それに、こうしてキミや誰かに対して、おちんちんやらセックスやらについて話すことになるとも、思ってもみなかった!!セックスの話なんてすると、みんなから軽蔑されちゃったりするでしょ?
でも、もっちーは言ってたよ。
「そうやって、セックスの話を他人任せにするから、セックスに関するレベルが低いまんまで、世代交代が進んじゃうんだよ。
誰かが、その『事なかれ主義』の連鎖を、断ち切らなきゃいけないのさ!」
そんなことを言っていたから、僕も、セックスの話題をみんなに話してみることに、決めたのさ。あんまりにも軽蔑されたり、怒られたりするなら、その時はその時に、考えればイイや!ってさ。
もっちーは、ひとしきりセックスの話が済むと、満足そうに去っていったよ。
オンナジような姿をした仲間が、他にもたくさん、居るらしい。もっちーは、「もっちーズ」のリーダーなんだってさ。
ハイミーが、提案してきた。
「たるとがキミの来訪をみんなに触れ周ってるようだから、ひょっとしたら、僕らのほうから出歩かなくても、必要なヒトが必要なタイミングで、やってきてくれるかもしれないねぇ♪
喫茶店で、お茶でも飲みながら、待ってることにしようかぁ?」
「僕は何でもイイけど、喫茶店なんてのが、ねむりあにもあるの?」
「まぁね♪人間の世界のほど、小洒落た場所じゃナイけどさぁ。」
僕らは、道沿いの小さな建物に入った。
打ちっ放しの簡素な建物で、光は入り口から取り入れるから、照明なんかは点けていなかった。それでも、お茶をして語り合うには、充分な明るさだったよ。
店内には、何組かのお客が、談笑したり、チェスのような遊びに熱中したりしていた。男性ばかりのようだった。
「ねぇ、ハイミー?ねむりあの男の人たちは、働かないの??」
「働く?ハイミーも男の子だけど、今も『導き』というお仕事の真っ最中だよぉ?
向こうの席の彼らは、『チェスを研究するお仕事』を真面目にこなしてるし、あっちの席の彼らは、『政治の在り方について論議してる』ようだなぁ。
みーんな、働いてる真っ最中さぁ♪」
「え!みんな、働いてる最中!?
でも、喫茶店でチェスなんかやってて、誰がお給料を払ってくれるの!?」
「お給料なんて、ナイよ(笑)」
「お給料がもらえないなら、『働いてる』とは言えないよ。そういうのは、『趣味』って言うのさ。
彼らは、チェスが趣味なんでしょ?」
「彼らは、ねむりあで最もチェスが上手い二人だよ!!
彼らのレベルで『趣味呼ばわり』されるなら、僕らのチェスは、『赤ん坊のイタズラ』ってカンジだなぁ…
彼らは、新しいチェスの戦法を編み出して、試しているんだよ。そんで、本にまとめて、みんなが理解出来るようにしてくれるのさぁ♪
そういうの、『仕事』って言わないかなぁ?」
「そりゃぁ、『仕事』だぁ。
でも、そんな立派な仕事をしてもお給料をもらえないんじゃぁ、喫茶店のお茶代は、どうやって払うの??」
「お茶代なんて、払わないよ♪」
「えー!!食い逃げの常習犯なの!?」
「あははは!
違うよ♪『誰でも』、『無償で』、お茶が飲めるんだよぉ♪」
「えー!?
この店のマスターは、福祉のヒトとか、そういうこと?」
「いいや?
彼も、フツーに働いているよ♪お茶や軽食を出すことが、彼の仕事だねぇ。」
「…じゃぁ、喫茶店の仕事のお給料は、誰からもらうの…??」
「だから、お給料なんて、誰からももらわないんだってばぁ(笑)」
「???
それじゃ、材料を買ってくるお金は、どうするの??」
「モチロン、茶葉屋さんも小麦粉屋さんも、お金をもわずに、品物を提供するんだよぉ♪」
「……えぇと、
…つまり……、
誰もお金をもらわないし、誰もお金を払わないの…???」
「ピンポーン!そういうことさぁ♪」
「そんなコトしちゃったら、タダだからって毎日何十杯もお茶を飲みに来るヒトが、現れない!?お店がつぶれちゃうよ…」
「ここのハーブティは、たしかに美味しいけどさぁ。かと言って、1日に何十杯も飲みたいかな??
…まぁ僕も、初めての頃は何杯もおかわりしちゃったけれど…あんまり飲みすぎると、お腹を壊すし飽きるから、すぐにほとぼりが冷めるよぉ(笑)
そんなカンジで、1日に何杯も飲もうとするヒトなんてそうそう居ないから、お店がつぶれたりは、しないさぁ♪
ちゃーんと、住民全てに行き渡る数の喫茶店が、この国には配置されているしねぇ♪
喫茶店に限らないよ?レストランだってゲーム屋さんだって、みーんな同じ仕組みで動いているよ♪
ねむりあでは誰も、過剰に独り占めしようとはしないからねぇ。だから、キミたち人間の社会とは違って、お金で厳しく規制したりする必要は、ナイのさぁ♪
…そういえば、この国でも、キミらの世界と同じように、テレビゲームがメチャクチャ流行った時期があったよ!既存のお店や工場だけでは、販売や生産が、追いつかなくなっちゃった。」
「そしたらやっぱ、特例で、お金を使うようにしたんでしょ??」
「そんなコトは、しないよぉ♪
ねむりあの全土から、テレビゲームの製造・販売に興味あるヒトを、大募集したのさぁ!
彼らに、無償で材料を配布して、スキルを伝授してあげれば、1ヶ月もみんながガマンしていれば、すぐに、需要と供給のバランスが取れたよ♪
なーんでも、そうなんだよ?
何かが流行れば、何かが廃れていくから、働き手が不足するなんてことは、起こらないなぁ。
…いや、興味のある人材が不足しちゃうことは、たまにあるけどね。でも、『その分野が大好きってほどでもナイけど、手伝ってもイイよ』と名乗り出てくれるヒトは、大勢、居るからねぇ。キミらの世界で言うとこの、派遣社員に近い概念かなぁ。
こんなふうに暮らしていれば、品物の足りない業種なんて、そうそう現れないよぉ♪」
「ホントにー!?そんなことが出来るのって、ねむりあの国だけじゃない?
たいてい、モノが足りなくなったら、誰かが取り合ってケンカするか、高い値段で売りつけるようになっちゃうよ…」
「そんなこと、ナイさぁ♪
さっき、たるとから、シャンバラやテロスの話、聞いたよねぇ?どこでも、ねむりあと同じように、上手くやってるよ?
…まぁ、アトランティスだけは、奪い合いの社会になっちゃって、滅んじゃったけど…」
「あ!そういえばさ、イトコん家の近所の『道の駅』で、物々交換の市場みたいのやってたけど、アレと同じことかな!?」
「物々交換は、とても近い概念だね♪でも、オンナジとは言えないなぁ。
この喫茶店のマスターは、僕とぱるこから、何も受け取っていないでしょう?
目の前のお客さんから対価をもらわなくても、社会全体で巡り巡って循環していれば、何も問題はナイでしょう?」
「そうかぁ。でも、人気のナイお店は、困ったりしない?」
「何にも困らないよ♪
物資が足りなくなりそうな店があれば、あっちこっちから救援物資が届くからさ♪
だって、来年の分の茶葉を抱え込んでいて、何の得がある?お店が狭くなっちゃうだけだぁ(笑)」
「じゃぁ、働かないヒトがいっぱい出てきちゃったら、どうすんの??レストランの店員が、サボりたいかもしれないよ?」
「サボりたい仕事なんて、ヤメちゃえばイイのさぁ(笑)
もしくは、一時的に、誰かと仕事をチェンジしてもらうとか、さ?
チェスだって、テレビゲームだって、セックスだって、立派な仕事になり得るんだよ。だから、『何も仕事をしない』なんて、そっちのほうが難しいよぉ(笑)
「それでもさ?一日中寝ていたいヒトなんかも、いるんじゃない?僕らの社会でも、ニートとかヒキコモリとか、ニュースで問題になってたよ?ああいうのはサスガにもう、『手に負えないクズ』ってことだよね?」
「そうかなぁ?
たしかに、なーんにも作業をしたくナイ時って、誰にでも、あるよ(笑)
でもさ?1ヶ月もボーーっとし続けてみたら、たいてい、何かしら、取り組みたくなるさぁ(笑)
『仕事』ではなく、『勉強』とか、テレビゲームみたいなモノかもしれないけれどさぁ。
ソレはソレで、有意義だと思わない??
彼らが勉強したり探求したりしたコトが、近い将来、みんなの役に立つかもしれないよ??
それに、文明の発展を客観的に眺めてみると、さ?人口の1割くらいの人たちは、役に立たないようなことをやらせておいたほうが良いんだよ。子供が落とし穴掘ってて化石を発見するように、画期的な何かをもたらす可能性が、あるからね。極端に言えば、人類の進歩なんて、イタズラ小僧たちが牽引してきたようなモンだからねぇ♪
それに、ぱるこたちの社会のニートとかヒキコモリたちも、『何にも貢献していない』ってワケじゃぁ、ナイようだよ?
彼らはたいてい、インターネットを好むねぇ。インターネットを開いて、何してると思う?
巨大な掲示板やコミュニティに遊びに行って、そこで、見知らぬ人たちに、パソコンの操作方法を教えてあげたり、外国のミュージシャンの名前を教えてあげたり、しているよ?
片や、『ちゃんと働いている』人たちは、時給1,500円もらわないとパソコンの使い方を教えてあげないけど、ニートと呼ばれる人たちは、一銭ももらわずに、アレやコレやを教えてあげたり、してるよ?とんでもなく素晴らしい絵を描いたり、音楽を作ったり、ゲームを作ったりして、無償で公開しているヒトたちも、いるよ??
彼らは、『税金は払っていない』かもしれないけれど、はたして、『社会貢献していない』とも、言えるかなぁ?
近頃なんか、高いお金をもらってる芸術家さんよりも、ニートやヒキコモリのアマチュアさんのほうが、よっぽど素晴らしい作品を作ったり、しているよぉ(笑)
『税金を払わなかったら、社会貢献していることにならない』と言うのは、税金で私腹を肥やしている政治家さんたちの、勝手な都合じゃないかなぁ?」
「なるほどねぇ…。
僕、時々思うんだけどさぁ、なんで、学生のうちは、お金稼がずに趣味に打ち込んでいても、褒めてもらえるのに、
大人になっても趣味に打ち込んでいると、けなされるのかな?
じゃぁみんな、学生のままで居れば、いいのにさ?
…でも、そうすると、ご飯作るヒトが、居ないかぁ…
…いや、ご飯作るのが趣味ってヒトも、多いよなぁ!
…でも、趣味で料理してたら、食材が買えないかぁ…
いや、ガーデニングが趣味ってヒトも、多いよなぁ!」
「ピンポーン!そういうコトなんだよぉ♪
資格があろうが無かろうが、コンテストに入賞しようがしていなかろうが、誰かを満足させるだけのスキルさえあれば、その趣味は、立派な『仕事』さぁ♪
…いや、『これは仕事です!』なんて、真面目ぶる必要すら、ナイんだよ(笑)
みーんな、みーんな、『趣味を楽しめばイイ』のさぁ♪それだけでも、たいていの業種は、網羅できるよ♪
…たしかに、ビラ配りの作業なんていうのは、趣味にしたい人がさっぱり居ないかもしれないよ?
でも、趣味にしたい人がさっぱり居ない作業というのは、そもそも、大衆が必要としていない業種なんだよ(笑)
もし、全てのピザ屋が、チラシの投函をヤメたなら、消費者たちは、自分でネットを検索したりして、値段や場所を突き止めるさぁ。そしたら、全てのピザ屋は、派手なチラシを大量印刷したり投函したりするコストを、ぜーーーんぶ削減できるよ♪コストが下がれば値段も下がるし、値段が下がれば、消費者も喜んで買いに来るね♪」
「うんうん。わかる気がするなぁ。
本当に親切なお店だったら、頼んでもいないのにポストにチラシを入れたりしないよなぁって、思うよ。
…ひょっとして、お金を使わない社会を造るのって、ものすごくカンタンだったりする!?」
「ピンポーン♪
『お金を使わないほうがみんなが得する』ってことに、住人みんなが気付けたなら、あっという間に、そういう社会が出来上がるよ♪
今はまだ、オトナたちは、『お金で売買しているほうが、得だ!』って、感じているのさぁ…。」
『イーストエンドは西の果て』
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