16 トモコの恋愛観
クミちゃんが帰ったあと、
奥で帳簿を書いてたゆっこちゃんが、私に尋ねた。
「トモコさん、独身だったんですかぁ!?
でも前に、旦那さんがお店に来たような…??」
「あぁ、あの人?
あの人、旦那じゃないわよぉ。
ボーイフレンドってトコね。」
「じゃぁ、そのうち彼と結婚するってこと?」
「いやぁ、結婚はしないと思うわぁ。恋人じゃないもの。」
「え?ボーイフレンドなのに、恋人じゃないの??」
「あはは。そうよぉ。
『恋人』っていう契りは、交わしてないわねぇ。
私、『結婚』だけじゃなくて、
『恋人』っていう制度にも、あんまり魅力感じてないからぁ。」
「えー!!?
でも、恋人契約を交わしておかないと、ほかの女性になびいちゃうかも?」
「そうよぉ?なびいちゃうかもしれないわ。
でも、『恋人です』って宣言したって、なびくときはなびくんじゃなぁい?
浮気行為しないように我慢することは出来るでしょうけど、
でも、気持ちがなびくのは、抑えられないわよねぇ。
どんな首輪で縛りつけたって、彼がほかの女性になびく気持ちは、抑えられないわぁ。
嫉妬に狂ったところで、どうにもならないことなのよぉ。
他人の心を独占することなんて、出来やしないし。
他の女性に気移りされてても、体さえ独占できてれば、それで満足?
私は、満足できないわぁ。虚しくなっちゃう。
同じように、私だって、
ほかのメンズになびいちゃうかもしれないでしょ?
『恋人』なんていう契りは、実際のところ、何の効力もナイのよぉ(笑)
だったら最初から、交わさないほうがラクじゃなぁい?」
「でも、『恋人』ってことになったら、送り迎えとかも、してくれるかも?」
「あははは!恋人じゃなくたって彼、頼めば車出してくれるわよぉ?
優しい人だもの。私だけにじゃくて、誰にでも車出したりするわぁ。」
「でも、『恋人』ってことにしておかないと、彼がほかの女性とセックスしちゃうかも?」
「そうよぉ。それでイイんじゃない?」
「イイの!?」
「イイわぁ。その代わり私だって、ほかのメンズとセックスしちゃうかも?」
「イイの!?」
「彼もそういうスタンスで同意してるから、イイんじゃないかしらぁ?
嘘はついてないし、裏切りにもならないし。」
「トモコさん、ほかの男性ともセックスするの??」
「うーん。実際のところは、彼以外にセックスすること無いわねぇ。
こんな引きこもり生活してたら、出会いなんて全然ナイし。
でも、明日はしたくなるかもしれないし、するかもしれないわぁ。
それは、私にもわからないことよぉ。」
「へんなのぉ」
「そうよぉ。私はヘンな人間なのよぉ(笑)
でもさ?恋愛感情ってそういうモノでしょ?
セックスしてみたい異性なんて、一人に絞れないのよぉ。それが本心。
道徳的にはマズいんでしょうけど、悲しいかな、それが本心よ。
男性は特にそうだけど、女性だってそうよね。
でも、『恋人』の契りを交わすってことは、
『あなたにしか興味ないです』って宣言するのと同じじゃない?
私、そういう嘘はつけないわぁ。
逆に、恋人に嘘ついて他のメンズと浮気するなんてことも、出来ないわ。
心が痛いもの。
とにかく私、正直でいたいのよぉ。
…まぁ、私は変人の部類よぉ(笑)
ゆっこちゃんはマネしないほうがイイと思うわぁ(笑)」
「ふぅん。
トモコさん、変人なのかなぁ?
ひょっとしたら、一番マトモなのかもしれないけど…」
------------------------END-----------------------
2013/08/17 完筆
『トモコのセキララ恋愛講座』