22 禅問答 『イーストエンドは西の果て』
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- 2023年3月21日
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22 禅問答
ハイミーと話しながら、もう30分は歩いただろうか。らおすとやらは、どこにいるんだ?
そもそも、人間タイプのヒトにも、ゼンゼン会わないんだ。
「ねぇハイミー?
あとどれくらい歩くの?そろそろ、陽が暮れちゃうよ…」
「もう着くよ♪
『西の谷』の人たちは、それぞれに小さな集落を作って、少し離れた場所に暮らしているんだよぉ。
彼らは、『地方自治』について、探求しているんだぁ。」
「地方自治?自治って、町内会のこと?」
「そうだねぇ。町内会も、地方自治の1つだねぇ。
地方自治っていうのは、国の中央政治に頼らないで、地域の人たちが自分たちで助け合うことを言うんだよぉ。」
「学校で言うところの、生徒会かな?」
「そうそう!そんなカンジだね♪」
ようやく、小さな集落にたどり着いた。
わらぶき屋根の簡素な平屋が、20個くらい点在していたよ。どの家にも、囲いという囲いは無くて、玄関は開きっぱだった。田舎のおばあちゃん家の風景が、なんとなく、近いかなぁと思った。
メインの通りの外れに、人だかりの中心に居る、象の姿が見えた!!
僕は、たまらず駆け出した!
「こんちわー!
あなたが、らおすさん?僕、ぱるこって言うんだ!
人間だよ。さっき、下から登ってきたばっかなんだ。
ハグしても、イイ?」
僕は、かいるのあいさつがエラく気に入ったから、マネしてみることにしたんだ♪
チョっと恥ずかしかったけど、それでも、社交的に振舞えた自分が、なんだかカッコイイと思った!
「おぉ…!キミがぱるこ君か!
まさか、こんなところにまで来るとは、思わなかったよ!
もちろん、ハグしようじゃないか♪…そうだなぁ、この鼻にでも抱きついておくれ♪」
僕は、らおすの立派な鼻に、抱きついた。土の匂いと太陽の匂い、そして、ほのかな暖かみを感じた。さむすんと同じように、ゴツゴツしていて、それでいて、柔らかかった。
らおすは、およそ象らしくナイ色をしていた(笑)
カラダが黄土色で、耳の辺りだけうぐいす色だった。カボチャみたいな色って言えば、イメージ出来る?
「…それで?
人間クンは、迷子にでもなっちゃったかな?」
らおすは、ゆっくりと、落ち着きのある話し方をしていた。その声を聞くだけで、安心しちゃうカンジだった♪
「イヤイヤ!
さむすんに、らおすさんのこと、紹介してもらったんだよ♪
藍色のゲームの、修行をしに来たんだ!」
「ほぉ!それで遥々、この村まで、足を運んでくれたのかな?
それはそれは、とても光栄だよ♪
ちょっと誰か、ぱるこ君に、お茶菓子でも持ってきてあげて?」
一人のお婆ちゃんが、にこやかに手を挙げて、自分の家へと引き返していった。
「…うん。たしかに、藍色の修行をしたいなら、私が打ってつけだろうなぁ。
ココに集まっている人々も、藍色のチカラを付けるために、私に会いに来てくれているのだよ♪
皆さん、今日は特別な客人があったようだ。悪いが、彼との対話を、優先させてもらっても、よいかな?」
誰も、不満げな人は居なかった♪僕は、ちょっと安心したよ。
「皆さん、ごめんなさい、ジャマしちゃって。」僕は、丁寧にお辞儀をした。
「…おや?キミは日本人だね?
その仕草は、日本人の伝統だった気がするが…」
利発そうな男性が、そう言った。
「そうだよ。おじさんは、どこの国の人?」
たいていみんな、黒い髪と黄土色の肌をしていた。
日本人のような気もするし、そうじゃナイような気もした。
「私は、…というか、この小さな集落に住む人たちはみんな、カンボジアという東南アジアの小国の出身だよ。小さな国だから、知らないだろうなぁ。」
「カンボジア!?遺跡があるところ!?」
「まぁ、遺跡は大抵の国にあるが、カンボジアには世界有数のアンコール・ワットが、あるねぇ。」
「さっき、かいるの話に出てきたよ!
かいるって…いるかさんのことなんだけどさ。
『旅するなら、カンボジアがオススメ』って、教わったんだ♪」
「そうかそうか♪
たしかに、日本の若者にとって、カンボジアという国に訪れることは、非常に興味深い体験になるだろうなぁ。
…おっと!私がお国自慢をしている場合では、なかったね(笑)」
さっきのお婆ちゃんが、ナンのようなパンと紅茶のような飲み物を持って、僕が話し終えるのを待ってくれていた。
僕は、笑顔でお礼を言うと、お盆を受け取り、早速ナンをひとかじりさせてもらった。
「甘い!甘くて美味しいよ♪おかわりしちゃうカモ!?」
自分が初対面の人に対して、フランクに話し、ジョークまで口を付いているのが、僕は信じられなかった(笑)
「どうぞ♪いくらでも、おかわりして下さいな。」
お婆ちゃんは、にこやかに答えてくれた。
らおすが、場を仕切りなおした。
「さぁ、食べながら、話をしようね♪
…それと、正座なんて、要らないからね?フランクに接してくれれば、うれしいよ。
『らおすさん』じゃなくて、呼び捨てでカマワナイんだ♪」
「えー??お坊さんって、礼儀に厳しいんじゃナイの?竹刀で叩くんでしょ??」
「わははは!そういうのは、旧いタイプの仏教僧だよ。黄色のオーラが、未熟なのさ。
知ってるかな?
黄色のビー玉を授かるほどになると、敬語での会話やなんかで、窒息死してしまうんだよ!(笑)」
「ユーモアとフランク!?」
「ご名答!どこかで勉強してきた様子だね?」
「つい今さっき、ハイミーに教わったんだよ。『一夜漬け』さ(笑)」
「なるほど!そうきたか!!
キミは、ユーモアのセンスがあるぞ!コレは、有望株が現れたなぁ♪
それで、 ハイミーの弟子だって?そりゃぁ納得だ!
…そうか、だからみんな、キミのうわさをするんだねぇ…。」
「ん??」
「イヤイヤ、何でもナイさ♪
時に、ぱるこ君。
キミはなるべく、『敬語や礼儀に厳しくナイ人たち』と、一緒の時間を過ごしたほうがイイ。礼儀作法に厳しすぎる連中は、キミの珠玉のユーモア・センスを、台無しにしてしまうからなぁ。
やがてキミが、大人になって働く際も、黒いスーツを着なくても済むような仕事が、良いだろうなぁ。」
「うん。僕、真っ黒いスーツは着たくないって思ってたよ。
アレは、個性を失くしちゃうんじゃないかなぁ。ネクタイは、犬の首輪みたいだしさぁ…」
「はっはっは!ご名答♪
黒い服は、スーツに限らず、あんまり、着ないほうがイイ。
お察しの通り、黒とは、個性を殺してしまう色なんだ。冬でも、なるべく明るい色を着ていたらイイよ♪
…で、何だったかな?藍色の修行だったか!
つまり、『禅問答』の練習をしに、来なすったな♪」
「ぜんもんど!?」
「わはははは!若人(わこうど)には、耳なれぬ言葉だろうなぁ。
禅問答とは、…まぁ、トンチ・クイズだな♪なぞなぞだよ(笑)」
「なぞなぞ!?僕、なぞなぞしに来たの!?」
「そうさね♪
でも、ただのなぞなぞでは、ナイぞ?
禅問答は、『イジワル・クイズ』ばっかりなのさ(笑)」
『イーストエンドは西の果て』