26 神隠し
…お手洗いから出てきて、
私は、仰天した!
人っ子一人、いないのだ…!!
ついさっきまでベンチを埋め尽くしていた、
100人以上もの日本人が、こつ然と、姿を消してしまった…!!
今日は朝から、
神秘現象なんぞもたくさん垣間見てきたけれど、
ついに、
神隠しの現場にまで、遭遇してしまったのだろうか…!?
目を真ん丸くしている私の元に、
空港スタッフの女性が、駆け寄ってきた。あわてている!
「はぁ、はぁ、ぜぇ、
あの、お客様、ヒサドミユキコ様では、ございませんでしょうか!?
ぜぇ、ぜぇ…」
「…は、はい?そうですけど…。」
何でこの人は、私の名前を知っているんだ?
私の頭の中は、「?」でいっぱいだった…
「恐れ入りますが、大至急、
搭乗をお願い頂けますでしょうか?」
「え!?
私、20分もトイレに篭(こも)ってたんですか!?」
言わなくてイイことまで、口走っていた(笑)
「ププっ!
…いえ、
お、お、お客様の御用足しのお時間は、わか…解りかねますが…、
なにぶん、離陸時間が差しせまっておりまして…!」
お姉さんは、
私の思いがけない発言や、空気を読めていないすっとんきょーな立ち振る舞いに、
やや動揺を隠せないようだった。
…それはそうと、
どうやらこのお姉さんは、
私の行方を捜すために、あちこち走り回ってくれていたようだ!
…「神隠し状態」だったのは、私のほうみたい…(笑)
『星砂の招待状 -True Love-』