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33 かっしーの館 『イーストエンドは西の果て』

  • 執筆者の写真: ・
  • 2023年3月21日
  • 読了時間: 6分

33 かっしーの館

 ついに、ハイミーが減速した。到着だ!!!


 ハイミーは、「着いたよ♪」とにこやかに言ったけれど、相変わらず真っ暗で、何にも見えなかった(笑)

無闇に歩くと壁に衝突すると思ったから、ハイミーの光より前には、出なかった。

 ハイミーの光は、周囲を照らせるワケでは、ナイようだった。コラージュ写真みたいに、他とは別の世界に存在しているようだった。

 僕がゼーゼーハーハーやっていると、奥の暗闇から、足音が聞こえてきた。フシギな感覚だった。


 不意に、ギィィィィィィ!という音と共に、木であろう扉が、開いた。

 その先に、ランタンを持った男の人が、優しい笑顔で立っていた。

「あなたが、かっしー!?」

 息を切らしながら、あいさつよりも何よりも先に、彼の名前を尋ねている僕が居た。

「ザンネン!私は、この館の庭師に過ぎないよ(笑)

 状況は、大体把握しているよ♪

 こんなにも暗い闇の中を、こんなにも長い距離を、ご苦労さん♪キミは、素晴らしい精神力をしているね!

 とにかく、中へお入りよ?

 お腹も減っているだろう?温かいモノを、持って来させようね♪」


 彼の後ろについて、建物の中に入っていった。玄関を抜ければ、その先はもう、昼間のように明るかった。

 応接間のような場所に通され、僕は、柔らかいソファに腰を下ろした。


 かっしーの館は、「西の谷」の家々よりは、ずっと大きく、清潔なカンジだった。

 僕は、こんなに汗まみれのカラダで、清潔なソファに腰掛けてイイのか?とためらったけど、庭師のおじさんは、「問題ナイよ♪」と笑った。

 ねむりあの住人たちは、とにかく、誰もが、さわやかで美しい笑顔を持っていた。

 彼らの笑顔を見るだけで、癒されてしまう感覚を、覚えた。笑顔ってのは、フシギなチカラを持ってるよ♪


 しばらくすると、僕より少し年上くらいの女の子が、料理の載ったお盆を、運んできてくれた。

 …とても可愛いかった!!

 彼女は、妖精みたいなシャラシャラの服を着ていた。薄い薄い、黄色だった。

 僕は、とっさにキンチョーしてしまって、ロクに顔も見れなかった…

 彼女もシャイなようだったけど、僕よりは、マシだった。

「どうぞ♪」

 とささやくと、テーブルの上にお盆を置き、音も立てずに奥へと戻っていってしまった。


 僕は、料理を食べながら、ヒソヒソ声で庭師のおじさんに尋ねた。

「今の女の子…

 妖精ってヤツなの?」

「あははは!キミと同じで、人間の身体を持った女の子だよ!

 …まぁ、中に宿っているのは、天使だけれども。」

「え!?天使??」

「そうさ?人間と同様の肉体を持っているけれど、思考している意識体は、人間じゃナイんだよ。

 彼女の場合は、『新米の天使』といったところだなぁ。」

「天使が、人間の格好で生きてるの!?」

「そんなに珍しいことでは、ナイんだよ?

 キミは、日本人だろう?

 今の日本(21世紀初頭)には、彼女のように、人間の肉体に宿った天使が、大勢転生しているよ。

 …まぁ、はた目からは、中の意識体が地球人なのか天使なのか、見分けることは難しいだろうけども。

 彼女のように、目がパッチリとした二重で、可愛らしい顔立ちをしているヒトは、男性も女性も、天使である可能性が高いだろうなぁ。

 ちなみに、人間の姿で暮らしているのは、天使だけでは、ナイんだよ?

 宇宙人も居るし、植物や鉱物の妖精も、暮らしているよ♪

 本来は、地球人以外の意識体が地球に肉体転生をすることはまれなんだが、今、地球は、大きな変革期に在るんだよ。『大アセンション期』と言われるものだね。


 地球人たちのアセンションをサポートするために、多くの優秀な宇宙人や天使たちが、助っ人として、意気揚々と降り立っていったんだが…

 ほとんどの『助っ人』たちは、自分の使命や正体を、思い出せないままだ(笑)

 なにぶん、いったん新生児の肉体に宿ってしまうと、生前の記憶を忘れてしまう仕組みだからねぇ。

 霊的な勉強を積んだり、藍色のオーラを強化したりしていくことで、自分の使命や本質を思い出していく計算だったんだが…地球の霊的な理解が、思うようには進んでいないんだ。

 未だに、霊視や霊聴を誇示する者たちが、もてはやされ続けている…どうしたものかなぁ(笑)」

「そっかぁ…

 僕みたいな『ヘッポコ勇者』をサポートするために、たくさん、宇宙人とか天使とかが駆けつけてくれてんだぁ。ありがたいねぇ♪」

「はっはっはっは!違うよ(笑)

 キミもまた、『優秀な助っ人』のうちの、一人さ♪

 キミは、地球人じゃナイ。シリウスという惑星出身の、宇宙人さ。」

「えー!?僕が、宇宙人??

 それは、ナイナイ!僕、シリウスとか知らないし!!」

「さっき言ったろう?

 シリウスに居た頃の記憶など、赤子に宿った途端に、カラッポになってしまうんだ。

 …でも、日々の暮らしの中で垣間見る、ある種の言葉や風景などに、『漠然とした懐かしさ』を感じたりすることは、あるだろうね♪宇宙人の転生者たちは、宇宙に関連する事柄にワクワクするだろうし、パソコンやテレビゲームなどの電子機器に、強い興味と適応を、示すだろうなぁ。」

「僕、テレビゲームは好きだぁ…。」

「そうだろう?

 表層意識の記憶は失っても、潜在意識は、何一つ、忘れはしないよ♪」

「表層意識?潜在意識??」

「ゴメンゴメン!少し難しい言葉を使い過ぎたね(笑)

 さぁさぁ、私と雑談することがこの館に来た目的では、無かったはずだろう?

 食事が済んだなら、館を見て周っては、どうかな?」


「そうだった!!

 僕、時間があんまりナイんだよ!!かっしーを見つけて、会わなくちゃいけないんだ!!」

「そうだろう?

 出来ることならば、かっしーのところまで案内してあげたいんだが、今のキミに対しては、これ以上の手助けは、禁じられているもんでねぇ…(笑)」

「…やっぱ、自分で突き止めなきゃ、ダメ?」

「『キミは』、そういうルールになっているらしいね(笑)

 さて。

 この館は3階まであって、部屋は全部で12ある。

 ほとんどの部屋は、ドアが開け放たれているだろう。勝手に入っても、怒り出す者は居ないよ。

 …ドアが閉まっているとしたら、眠っているか、難しい作業でもしているのだろう。

 かっしーは今、ドアを閉めてはいない。

 だから、開いている部屋の中から、かっしーを見つけ出すといい。」


「見つけ出すって…

 10個ばかしの部屋だったら、全部回ったって、10分も掛かんないんじゃない?

 かっしー、かくれんぼしてんの?それとも、ハイミーみたいに小さいとか?」

「身体の大きさについては何も言えないが…隠れたりは、していないよ(笑)

 問題は、『誰がかっしーであるか』を、キミが突き止められるかどうか、それだけさ♪」

「そんなの、名前を聞けばイッパツじゃん?」

「おやおや!?

 かっしーに会うには、藍色のスキルが必要なんだろう?

 名前を尋ねるだけで、すんなり突き止められるだろうか…?一筋縄では、いかないと思うけどなぁ(笑)

 ひょっとしたらキミは、『かっしーに会えた!』と勝手に思い込んで、違う者と延々と談笑を続け、時間を使い果たしてしまかも、しれないよ?」

「そうかー!!

 どーせ、一筋縄じゃ、いかないんだよなぁ…

 でも、きっと突き止めて見せるよ♪」

「頑張っておくれ♪

 ちなみに、今、下の世界では22時半を回ったところだ。

 キミは、深夜12時になったら、強制的に下の世界に送り返されてしまうよ?

 あと、1時間半…

 さぁて、無事、かっしーを突き止められるかな!?

 …あぁ、そうそう!キミに、ヒントを手渡すよう、頼まれているんだった。」

 おじさんは、上着のポケットをガサゴソと探って、1枚の小さな紙切れを、僕にくれた。


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 ヒントその1…

 かっしーは、『自由の部屋』に居る。


 ヒントその2…

 かっしーは、『究極の父性愛者』だ。


 ヒントその3…

 かっしーは、『森黙の詩』を歌っている。


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「『自由の部屋』!?『森黙の詩』!?ナンなの、それ??」

「はっはっは!それは、キミが考えるんだろう?

 私はもう、何もコメント出来ないさ♪

 それでは、幸運を祈っているよ♪」

「うぅぅー、そうかぁ…

 でも、ありがとう♪またね!」

 僕は、おじさんにハグをすると、突き当たりの階段を、駆け上がっていった…


『イーストエンドは西の果て』

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