38 五感を超越した魅力
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- 2023年3月2日
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38 五感を超越した魅力
「…さぁて、
そろそろ、お別れの時間かなぁ。」
「…え?
離島桟橋は??」
「離島桟橋まで送っていってあげてもイイんだけど、
そこまでも、自分で行ってごらん♪
…だいじょうぶ。
ココからなら、10分も掛からないよ♪
道行く人は、ほとんどみんな、離島桟橋の場所を知ってるハズだから、
尋ねながら、歩いてみてごらん♪出来るべー?」
「…う、うん!出来るぅー♪」
「じゃね♪」
彼は、あっさりと、身をひるがえそうとした。
あれだけ暖かいのに、なんて潔い人なんだろう。
「あ、あ…」私は、目に見えて動揺してしまった。別れが惜しくて。
「そーんな不安そうな顔、しないの!」
彼は、再び踵(きびす)を返してそう言うと、
私の震える小さな体を、
そっと、ハグしてくれた…!
しかし、すぐに体を離すと、
「今度こそ、じゃぁね♪」
と言い残し、
今度こそ本当に、
振り返ることなく、どこかに消えていってしまった…
…一体全体、
ヒロさんという人は、
本当に存在していたんだろうか!?
今でも時々、
彼が実存の人間だったのか、
解らなくなるときが、ある。
私がまぶたの裏に見る「天使カンニング」や「空のキラキラ」のような、
映像の一部だったんだろうか?
…いや、
ハッキリ断言しておきたいのだけれど、
私はファンタジー小説を書くつもりは無く、
自分の恋愛願望のアレコレを一人の男性に詰め込みたいワケでも、ナイのだ。
ヒロさんは、本当に、実在しているのだ。
…名前はちょっと、いじくってあるけれども。
私は、
しばらく歩道の真ん中に突っ立って、
ヒロさんのエネルギーに浸っていた。
ヒロさんの「エネルギー」に、浸っていた。
…「温もり」などという表現より、もっと包括的な単語が、必要だった。
彼は、物質的・肉体的な魅力は元より、
精神的というか、哲学的というか、感性的というか、
とにかく「五感を超越した魅力」を、持っていたから。
私は、
男の人と2人きりで、
食事をするのも、3時間以上喋るのも、生まれて初めてだった。
生まれて初めてのそれがヒロさんであったことは、
この上なく幸福であった♪
…だけではなく、ある意味では、災難だった(笑)
なぜかと言えば、
私はそれ以降、
恋愛関係に発展しそうな男のヒトが現れても、
そのヒトとヒロさんを、比較してしまうからだ(笑)
それは、
千葉と東京しか世界を知らないような彼らには、
あんまりにも、分が悪すぎた(笑)
…申し訳ないけれど、
世の中にはやはり、
「とても魅力的な男性」と「そうでもない男性」が、居る。
「魅力的」というのは、
カッコイイという意味ではないし、お金持ちという意味でもない。
そういう表面的な魅力を超越して、
もっと魅力的な男性というのが、ときどき、居る。
そして、
そういう、本当に魅力的な男性というのは、
向こうから口説いてきてくれたりは、しないものだ。
すると、
私たち女性側が積極的にならないことには、
そんな彼らをゲットすることは、できないようだ。
私は、積極的な人間になりたい。
『星砂の招待状 -True Love-』