40 笑顔 VS ライフル
僕は、誰も居なくなってしまった灼熱荒野を、
重い荷物を揺らしながら、小走りで進んだ。
空は、いつの間にか、
分厚い灰色の雲で、覆われていた。
けれども、僕は、
空の変化に気付くほどの余裕も、無かった。
僕は、
次にどこに進めばイイのかも、わからなかった。
旅行者はもう、ほかには誰も居やしないんだ。
またさっきと同じように、何人もの人造人間たちに追い立てられて、
正面奥に位置する、石造りのゲートに辿り着いた。
そのゲートには、カウンターがあって、
兵士ではない初老のおじさんが、何かの手続きを受け持っていた。
彼は、僕が駆け寄っていくと、
「やぁ♪ハポネス(日本人)かい?」
と、陽気な笑顔であいさつしてくれた。
たったそれだけで、
僕が心身に負っていたズタボロのダメージは、
一気に回復してしまうのだった…!!
「笑顔」と「愛想」のチカラは、底知れない。
それは、
ライフルをも上回るパワーさえ、持っている。
どうやら、
この石作りの門こそが、「出国ゲート」であるようだった。
僕はようやく、「ベトナムを出国」出来ただけなのさ(笑)
…わかるかい?
まだ、「入国は済んでいない」んだよ(笑)
『永遠の楽園』