41 天使か悪魔か…
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- 2023年3月10日
- 読了時間: 4分
41 天使か悪魔か…
ザーーーーーーー!!!!!!!
石のゲートをくぐると、
急に、集中豪雨に襲われた!!!
つい3秒前におじさんの笑顔が塞いでくれた傷は、
あっさり、踏みにじられてしまった…
なんでこんなに、ドラマみたいに都合よく、集中豪雨に見舞われるのか、
納得がいかなかった(笑)
かっしーが、天気を操作したんだろうか…?
…いや、
守護存在たちは、天気を瞬間的に操作することは、出来ないよ(笑)
僕は、数十メートル先に見えている東屋に向かって、一目散に走った。
東屋に着いても、
雨を払い落とすようなココロの余裕は、無かった。
東屋には、幾つもの木のテーブルが置いてあり、
その上には、「入国カード」と鉛筆が、散在していた。
…入国カードというのは、入国審査の際に必要な、
名前や住所や渡航目的などを記入する、重要書類のことさ。
この、「入国カード」というのが、
旅の初心者や英語が不得意な人たちには、
なかなか厄介なシロモノなんだ!!!
現地の言葉と英語で、記入事項が刻印されているのだけれど、
何なのかよくワカラナイ項目も、
4つ5つ、混じっていたりするんだよ!!
キミ、「Occupation」とか言われて、わかる!?
僕が、入国カードの記入に苦戦していると、
音もなく、迷彩服の兵士が、僕のそばに立っていた。
彼の気配に気付いて、僕は、ビクっとした!!
…けれども、今度の兵士は、
ヘルメットも、ライフルも、隆々の筋肉も、
威圧的な表情も、「そうび」してはいなかった。
それどころか、
とても穏やかで、優しい笑みを浮かべていた。
彼は、僕の入国カードの記入を、手伝ってくれた。
…というか、ほとんど、代筆してくれた。
僕は、感謝の言葉と共に、
ビザがまだ取得できていない旨を、伝えた。
迷彩服の天使は、
すぐ10mほど向こうに構えられた、石造りのカウンターを指差し、
「あそこでGETできるから、行っておいで♪」と、微笑んだ。
雨は、まだまだ降りしきっていた。
僕は、濡れることを完全に諦め、ビザのカウンターまで走った。
カウンターは、
スタッフ側は屋内で、雨には降られないけれど、
旅行者側は、「ひさし」すら、ほとんど存在していなかった…。
僕が駆け寄ると、
スタッフはぶっきらぼうに、「30ドル」と呟いた。
…ん?
ホーチミンの「コケシのお姉さん」は、
「ビザは25ドル」って言ってたような…??
僕は、この無愛想なおじさんにボッタクラれていると思ったけど、
もう、言い争ったり交渉したりする元気は、残っていなかった…。
それよりも、少しでも、濡れたくなかった。
ビザを取得すると、
もうビショビショになってしまって、果たして有効なのかもわからない書類を持って、
更に、奥にある石造りの門に、走った。
どうやら、コレが、
「カンボジアの入国ゲート」のようだった。
…けれども、
当時の僕には、どのカウンターが出国で入国なのか、
そんなことを客観的に把握する余裕は、まるで、無かった。
入国のスタンプが押されると、
更にその30mほど先に、質素な東屋が見えた。
僕は、そこに向かって、再び走った。
雨は、相変わらず、「集中豪雨」のままだった…!!!
リュックの横ポケットに入っていた、懐中電灯やなんかが、
走る衝撃で飛び出し、どしゃ降りの地面に、落ちてしまった。
ツイてないときは、とことんツイてないモンさ。
東屋に到着する直前で気付き、止む無く、引き換えした。
再び東屋に向かって走る僕を、
東屋の屋根の下から、
家族のごとく同じような顔をした、4人の大人子どもが、
ビニールの雨合羽を振り回しながら、
「早く来い!早く来い!」
と、ゲラゲラ笑いながら、待ち構えていた。
僕は、「何の嫌がらせだろう」と思って、気分を更に悪くした。
僕のHPは、もう、2くらいしか残っていなかった…
僕が東屋に辿り着くと、
なんと、彼らは、
そのシワクチャの雨ガッパを、3ドルで売りつけようとしてきた!!!
薄気味悪く嘲笑する彼らから、それを買いたくは、なかった。
…けれども、
折り畳み傘しか雨具を持っていなかった僕にとって、
今この状況のためだけにでも、雨ガッパは必要に思えた。
僕は、止む無く、彼らから雨ガッパを買った。
彼らは、
お金を受け取ったかと思うと、4人掛かりで、僕に雨ガッパを着せた。
ケラケラと、楽しそうだった…!!
雨ガッパを羽織った僕は、
「次は、どこに行けばいいんだ?」
と、その彼らに尋ねた。
彼らが指差したのは、
その東屋のすぐ横にある、トタン屋根ガレージの、簡素な喫茶店だった。
そこに行くために、雨ガッパなど、必要では無かった…!!!
僕は、
「完全に、ハメられた!!」と思った。
…ムカついたし、悔しかったけれど、彼らには、何の感情も見せなかった。
怒っても、何の得にもならないことくらいは、解っていたからさ。
『永遠の楽園』