43 闇の中の闇
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- 2023年3月2日
- 読了時間: 3分
43 闇の中の闇
眠りに落ちた私は、
それこそ、白雪姫のごとく爆睡したようだった。
いつもより早く起き、緊張の繰り返しで、
馴れない冒険を積み重ね、灼熱の南国を歩き回ったのだから、
それも当然と言えば当然だった。
ついでに、
「優しいキスで、100年の眠りから目覚めさせてくれる王子様」
まで友情出演してくれたら良いのだけれど、
そこまで求めるのは、欲張りが過ぎるというものだろう。
…そもそも、この物語は、
ラブ・ロマンスとして結論付けてしまうと、
途端に色あせてしまうと思っている。
むしろ、
「恋愛や男性に溺れずに、自分の手足でもがく少女」
の、セキララ白書なのだから!
…だから、
「この後、ユキコがヒロさんと再会して、
白い浜辺でロマンチックなファーストキスを…」
みたいなことを、あなたが期待しているとしたら、
すぐに、この本を破り捨ててしまったほうがイイ。
ヒロさんはもう出てこないし、
ロマンスの類も、起こりはしない。
ヒロさんとの出会いは、私側にとっては、
ほのかなロマンスの芳香を、漂わせてくれはしたけれど、
アレはまさしく、オマケのようなモノに過ぎない。
「一方的な、乙女の憧れ」というヤツだ。
私は結局、
夕飯も頂かずに、夜中の2時頃まで、眠りこけていた。
ずいぶんと中途半端な時間だけれど、
「もうお腹いっぱい!」と、睡眠神経が叫んでいたので、
二度寝はあきらめて、起きることにした。
ずいぶんと寝汗をかいたので、
まずは再び、シャワーを浴びた。
家の中も外も、真っ暗だった。
部屋の一角に懐中電灯が掛けられていたのを思い出して、
それをたぐり寄せ、小さな灯りを頼りに、動いた。
なんだか、
大震災に備えて避難訓練でもしているようなキブンだった。
シャワーを浴びてスッキリすると、今度は空腹を感じはじめたけれど、
こればっかりは、ガマンするしかなかった。
部屋に居ても、することが無かったので、
私は懐中電灯を拝借して、
真夜中の「おとぎの町」を、散歩してみることにした。
外は、見事に真っ暗だった!
この島には、外灯というものがまるで存在していなかった!
加えて、どの家ももう、電灯は落としている。
懐中電灯が無ければ、本当に、どうにもならない、
「闇の中の、闇」だった。
…こんな夜中に、
15歳の女の子が1人で外をウロつくのは、
治安的に、大問題なのかしれない。
でも、それは、
あくまで、「都会の基準」だ。
沖縄の離島というのは、…と言っても竹富以外を知らないけれど…
治安への不安というものを、さっぱり感じさせない何かが、ある。
…いや、
「何かがある」んじゃない!「何もナイ」んだ!
都会は、
便利さや煌(きら)びやかさを、競い合うように詰め込んでいる。
「だからこそ」、それを奪いたがる人たちが寄ってきて、
盗難やらレイプやらが、起こるのだ。
それに対して、
このような「田舎の極み」には、
「何もナイ」を求める人たちが、寄ってくるのだ。
「何もナイ」を求める人たちが、犯罪を犯すワケが、ナイ(笑)
「ヒトが少ない場所に向かえば向かうほど、人は平和に過ごせるのだ」
ということを、実感させてもらった。
『星砂の招待状 -True Love-』