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44 「否定的な色メガネ」

44 「否定的な色メガネ」

 車は、更に1時間も走ると、

田園風景を抜け、田舎町のそれに変わってきた。

 ぱらぱらと、「田舎の人々の暮らし」が、垣間見れるようになってきた。


 マフィアのボスみたいな洋服・振る舞いのヒトは、

人っ子一人、見かけない…。

 みんな、とても質素な格好で、カラダの線はほっそりしていて、

髪の毛は、男性も女性もこざっぱりしていた。

 何より、

道行く人々の、瞳のクリクリさと笑顔が、素晴らしかった。

時折、車窓から顔を出している僕に気付き、

愛想よく、手を振ってくれた。



 僕は、カンボジア人の国民性が、

サッパリ、定義出来なくなってきた。

 迷彩服の天使…

 マフィアのボス…

 クリクリの瞳…


 いったい全体、

人間では無い生物の文明を、

垣間見ているような気さえ、してきた…。



 車はやがて、停まった。

大きな広場のような場所だった。

 停車した車のすぐ前には、

自販機くらいの背格好の、大きな鉄の箱があった。

 どうやらココは、

質素で簡素な、ガソリン・スタンドのようだった。

 車の給油の傍ら、

乗組員たちも、小休止を挟むようだった。


 でも、

マフィアのボスは、特に何も説明せずに降りていったから、

しばらくは、どうしてイイのか、何の時間なのか、わからなかった…(笑)



 一向に走り出す気配がナイから、僕も、車を降りることにしたよ。

 

広場の奥には、大きなガレージがしつらえてあった。

 そこを中心に、ぱらぱらと、ヒトの姿があった。

 今さっき車窓から見たような、フツウの人たちだった。


 毛の無い不恰好なニワトリが、何羽か居て、

それを、オムツが取れたばかりくらいの小さな子どもが、

1人でキャーキャーと追いかけ回していた。

…「追いかけ回している」というより、「翻弄されている」というカンジだけど(笑)


 それがあんまりにも微笑ましい光景だったから、

僕の顔からも、久しぶりに、笑みがこぼれた♪

 僕は、カメラを構えて、

あちこちの風景や表情を、のぞき込んだ。

 …見ればみるほど、純朴な表情のヒトが多かった…!!



 ガレージの手前には、

半畳くらいのサイズの、小さな東屋があった。

 その屋根の下では、

2人の女性が、大きな寸胴鍋を、ぐるぐるとかき回していた。

 甘い香りが、漂っていた。


 その様子を興味深げに眺めていると、不意に、声を掛けられた。

「お前、リエル(カンボジアの通貨)は持ってるか?」

 声の主は、マフィアのボスだった!!

 僕は、反射的に萎縮し、けれども、

「ドルしか持っていない」と、キッパリと言った。

 すると、彼は、

「仕方ねぇなぁ」というような表情を浮かべたかと思うと、

2人の女性に近寄っていき、紙幣をいくらか、手渡した。

 女性は彼に、寸胴鍋の中身を1杯、手渡した。


 次の瞬間…、

こともあろうか、マフィアのボスは、そのお椀を、僕に差し出した!!

「食えよ♪」

 その瞳は、周囲の人たちと同様に、澄み切っているように…感じられた…!?


 僕は、警戒心を解かずに、

「いや、でも、リエル・マネーは、持っていないんだ。」

 と、きっぱりと、断った。


 彼は、予想外のことを、口にした。

「ハッハッハ!

 オレが払っておいたから、オマエは払わなくてイイんだよ♪」


「…!?」


 彼が、僕の首元までお椀を差し出すので、

僕は反射的に、それを受け取ってしまった。

「食えよ♪」

 首をクイっと傾げて、食べるよう、促してきた。

 僕は、言われるままに、それを食べてみた…。

 

…正直、

 決して、美味しくはなかった(笑)

 けれども、

「何のコビも売っていない、とても純朴な味の食べ物だ」

 と、一瞬で、察知した!!

美味しくはなくても、

こうした、「現地の味」を垣間見れたことを、とても嬉しく感じた♪


 マフィアのボスは、

「どうだ?」と、興味津々な顔で、尋ねてきた。


 …僕は、返答に困って、

はにかみ顔で、ゆっくり首を傾げて見せた。

 その表情が、「キミョウな味だ」と物語っていることを、

マフィアのボスも2人の女性も、理解して、

それぞれ、ケラケラと笑った!!

 僕も、3人の笑みに釣られて、ハデに照れ笑いを返した…!!


 マフィアのボスは、僕とのやりとりに満足すると、

他の人たちのところへ、消えていってしまった…。


 僕は、その、おしるこみたいな食べ物を、

3口ほど食すると、耐え切れなくなって…(笑)

 止むなく、お椀ごと、女性に返してしまった。

 2人とも、イヤな顔一つせず受け取り、微笑んでいた…。

 


…!?

 僕は、サッパリ、イミがわからなくなってきた!!


 けれども、

 すっかり澄み切った青空の下で、カンボジア人たちの笑顔を見ていると、

「悪どさ」なんて要素は、さっぱり、感じられなかった!!



 不意に、

僕は、自分の過ちに、気が付いた!!!

 「人造人間たちの猛攻」やドシャ降りの雨で、ボロボロになっていた僕は、

国境をくぐった後の、「カンボジア側」の人たちのことまで、

「否定的な色メガネ」を通して、眺めてしまっていたんだ…!!


 たとえば、

マフィアのボスは、僕のことを、「You」としか、呼んでいない。

それを、「オマエ」と和訳するか、「キミ」と和訳するかは、

完全に、「僕の感性」に委ねられているんだよ。

僕は、その時の状況や、彼のいでたちから、勝手に、

「You」という単語を、「オマエというニュアンス」で、読み取っちゃっていた…!!


 …全てのことが、それと同じだった!!


 たとえば、

僕に雨合羽を売った家族は、あくまで、

「家族そろって、満面の笑顔だった」というだけさ!!

 それを、「あざけり笑い」と解釈してしまったのは、

あくまで、「僕自身」に過ぎなかった!!


 後になって思い返してみれば、

国境を越えた「カンボジア側」の人たちの瞳は、

人造人間たちの冷たいそれとは、明らかに、違っていた。


 けれども、あの時の僕は、

出国ゲートをまたいだところから、人種がカンボジア人に切り替わったことさえ、

理解していなかったのだ!



…僕は、この一件で、

「人間の弱いココロが誘発する、偏見の恐ろしさ」

を、まざまざと痛感した!!!

HPが1ケタの「瀕死状態」の時に、状況を的確に判断出来るなどと、

自分を過信しちゃ、いけないんだ(笑)



 「陸路で国境を越える」という作業は、

多かれ少なかれ、

どの地域でも、骨折りな作業になる。ヨーロッパ以外は、ね。

 けれども、

この時の「国境越え」ほど、

デンジャーで衝撃的で、有意義だったケースは、

それ以降、1度も、ナイ!!!


 同じ、「カンボジアの国境」でも、

翌年、タイからカンボジアへとまたいだ時は、

拍子抜けするほどアッサリと済んでしまったのを、覚えているよ(笑)

 「タイ―カンボジア」のルートは、

利用者も何倍も多く、ツアーガイドも、もっと過保護に世話してくれるのさ。


 僕が、生まれて初めての海外放浪において、

ベトナム経由のルートを選んだのは、

「シゲキ的な旅がしたい!!」と望む僕にとって、

まことにドンピシャなチョイスだったんだよ(笑)



 …キミがもし、僕のマネをして、

ベトナムからカンボジアへ国境越えをするとしても、

絶対に、絶対に、

僕よりもシビアな目に遭うことはナイから、安心しておくれ♪


※今とはなっては、このルートの国境も、もう快適に簡単に整備されたようです♪



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