48 お迎え
フェリーがシェムリアップに到着すると、
再びまた、みんなでバスに乗り換えた。
このバス乗り場には、
旅行者相手に金儲けしようと躍起になるジモティーが、ウジャウジャしていた(笑)
…日本じゃ考えられないコトだけど、
一般の、名も無き行商人が、小さなお菓子を1カートン抱えて、
出発を待機しているバスの中に、ズカズカ入ってくるんだよ(笑)
それが済んだかと思えば、
今度は、アイスクリームを3つ4つ手に持った、7歳くらいの行商が、
バスの中で、押し売りを始める…
そんな、熱気と体温で半溶けになったアイスを、
一体、誰が買うというんだろう(笑)
バスは、1時間も走ると、
どこかの街角に、停まった。
それがどこなのか、サッパリ解らなかった(笑)
バスから降りると、
「宿の客引き」たちが、ワラワラと群がってきた!
僕は、ビックリした!!
そのうちの1人が、
僕の名前がローマ字で書かれたプラカードを、高く掲げながら、
僕を、探していたからさ!!
「背の高い日本人だ」くらいの予備情報は、持っていたのだろう。
僕を見つけたその男の子は、
半ばムリヤリ、僕のことを、バスの前の人ゴミから、引っ張り出した。
僕は、
こんな強引な客引きに付いていってイイもんか、
アタマに「???」を浮かべていた。
…厳密に言えば、
プラカードに僕の名が書かれていることに気付いたのは、
彼が、僕を喧騒から引っこ抜いた後だった。
あの人だかりの中では、
プラカードを認識することが、出来なかっただろうさ…。
彼は、改めて、爽やかに挨拶し、名前を名乗り、握手を求めてきた。
僕は、そのままそれに応えた。
「ぱるこさんは、○○ツアーのカスタマーですよね?
僕、提携しているゲストハウスの、スタッフです!
○○ゲストハウスも、僕たちの系列です!」
彼は、
他のヒトたちが知る由もナイ、僕の名前と、「コケシ」のツアー会社の名前と、
昨晩泊まった宿の名前までをも、知っていた。
「僕たちのゲストハウスが、○○ツアーと提携しているんで、
ぱるこさんを、迎えに来たんです♪
一緒に、宿まで来てもらえますか??」
彼は、悪人顔は、していなかった。
でも、右も左もワカラナイこの街で、ウカツに着いていって良いモンか、迷った。
…とは言え、僕には、他に宿のアテも無かったし、
この近辺には、宿が点在する気配も、無かった…。
僕は、とりあえず、
冷静になり、慎重になった。
「えーっと、キミの宿は、料金は幾らなの??」
「部屋によって違うけど、1ドルから4ドルまで、あります!」
…一番高い部屋でも、安かった(笑)
「うん。値段は悪くナイぞ♪
じゃぁ、宿は、ココから何分くらいなの??」
「バイクで行けば、10分くらい!」
僕は、「例の作戦」を使うことにした。
「えーっとさ、
とりあえず、部屋を見せてもらってから、決めてもイイ?
でさぁ、もし、部屋が気に入らなかったら、
もう一度ココに、送り届けてもらっても、イイ??」
「うん。部屋を見てからでOKですよ♪
…ココに送り届けることも出来るけど…
僕らの宿のそばには、同じようなゲストハウスが幾つも並んでるから、
ココには戻ってこないほうが、イイ気もするけど…」
彼は、誠実で、知的だった。
僕は、彼のバイクの後ろに乗って、着いていくことにした。
『永遠の楽園』