49 マイペースな宿のヒトたち
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- 2023年3月10日
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49 マイペースな宿のヒトたち
少年のバイクの後ろに乗って、
郊外の住宅街を、突き抜けて走った。
この辺りは、
川岸の「高床式住居」とは、趣が違った。
ほどよく木立が残る、郊外の家並みだった。
津波や洪水の心配など、無さそうな土地なのに、
やっぱり、高床式の建築構造だった(笑)
きっと、「湿気対策の知恵」とかなんだろうなぁ。
また、
同じ高床式の木造家屋でも、コチラのほうが、造りがしっかりしていた。
川岸の家屋は、「ご近所さんと協力して、自分で建てた」カンジで、
この辺は、「専門家に委託して、建ててもらった」カンジだなぁ。
…もう1つ、大きな特徴は、
どの家にも、大きな青色の看板が、掲げられていたこと。
「カンンボジアン ピープル ナンチャラ…」とか、書いてあったのだけれど、
どうやら、「政党支持の表明」のようだった。
シェムリアップの郊外都市に住む人たちは、政治に熱心なんだなぁ!
少年の言っていた通り、
10分も走ると、ゲストハウスに到着した。
玄関は、大きな通りに面しているのだけれど、
建物は、少し奥まったところにあるから、
庭まで入り込むと、もう、大通りの喧騒は無かった♪
のんびりして、雰囲気のイイ宿だと感じた♪
僕が到着したとき、
庭では、ジモティーらしきメンズたちが、サッカーテニスをやっていた。
ゲストハウスの共有スペースに、
ジモティーたちがたむろしていることは、珍しいのだけれど…
僕は、早速、部屋を見せてもらった。
かなり部屋数が多いようで、
ドミトリー、シングル、ツイン、シャワー込/別、エアコン有/無…
と、様々な旅人のニーズに、応えられるようになっていた。
僕は、2ドルの、「エアコン無しのシングル」を選んだ。
…正直なところ、
宿に到着する前から、この宿にお世話になることは、ほぼ、決めていた(笑)
彼に、好感を持ったからさ♪
荷物を置くと、
お腹が減ったので、何か食べたくなった。
メンズたちがサッカーテニスに精を出す中庭は、
共有スペースであるオープン・ラウンジに、面していた。
僕は、ラウンジの座卓に腰を下ろして、カレーライスを注文した。
一番年配らしき青年が、
「一緒にプレイするかい?」と、笑顔で誘ってくれた♪
僕は、サッカーがあんまり好きでは無かったけれど、彼の厚意に応えた。
カレーが到着するまでの間、
みんなとコミュニケーションをすることに、したのさ。
このゲストハウスは、
なんだかよくワカラナイ、人員構成だった(笑)
僕らのサッカーテニスに、時々、
3歳くらいの男の子が、イタズラ半分で混じってきた(笑)
この子は、ゲームの流れを完全にかき乱していたけれど、
誰一人、キブンを害するヒトは、居なかった。
みんな、気さくで優しそうな顔をしていた♪
カレーが運ばれてくると、
僕は、ゲームから抜けさせてもらった。
カレーは、
60歳くらいの、色黒のおばあちゃんが運んできた。
年齢は、かなりいっているようだったけれど、
「おばあちゃん」と呼ぶには、動きが若々しかった。
働き者なのだろうと、思うよ♪
彼女は、僕にカレーを差し出すと、
気を利かせて、ラウンジの扇風機を回し、
首を、僕のほうに向けてくれた。
僕が「ありがとう♪」と、短く言うと、
軽くニコっと微笑んで、建物の中へ戻っていった。
食べ終えて、しばらく涼んでいると、
さっき僕をサッカーに誘ってくれた、最年長らしき青年が、
改めて、話し掛けてきた。
「やぁ♪観光は?しないの?」
「観光?したいけど…
ノープランだし、何すりゃイイか、ワカンナイなぁ。
とりあえず、アンコールワットが見たくて、カンボジアに来たんだけどさ♪」
「ガイドブックは?持っていないのかい!?」
彼は、フシギそうに、尋ねてきた。
「あはは!持ってナイんだよ(笑)
だから、ぜーんぜん、情報がナイんだぁ。」
「だったら、アンコールワットを中心に、オレがガイドしようか?」
「キミは、ツアーガイドなの!?」
「いや!『ツアーガイド』というのとは、違うんだけどさ。オレは、『バイタク』だよ。
でも、この辺じゃぁ、バイタクが、ガイドも兼ねちゃってるんだ。大抵ね。
…つまり、資格とかは、持ってナイんだけどさ?
でも、一通りは、ガイド出来るぜ♪」
「そうなのかー!じゃぁ、お願いしようかな♪」
「ヨシ、決まり!
…今日はまだ、2時過ぎだから、多少遊べると思うけど、
どうする?今日はもう、ゆっくり宿で過ごすかい?」
彼には、押し付けがましいところが、ほとんど、無かった。
ベトナムで関わったバイタクたちとは、かなり、性格が違うようだった。
たった数分の会話で、僕は、彼が気に入ってしまった♪
「うーん。
食べて涼んで、元気になっちゃったから、観光しようかなぁ。」
「OK!じゃぁ、オレも準備するよ。
ところで、ココには何日間、滞在する予定なの?
日数によって、レコメンズ(お勧め)するルートは、
かなり違ってくるんだけどさ?」
「…えーっと。
今日、明日、明後日…その次の日のお昼過ぎくらいに、
空港に向かう必要が、あるんだ。」
「OK!3日後の午前中も、観光出来そうだね♪
じゃぁオレ、着替えてくるから、
30分後に、再びこの中庭に集合で、イイかな?」
「わかったよ♪」
『永遠の楽園』